レビュー

編集だよりー 2009年5月2日編集だより

2009.05.02

小岩井忠道

 通信社時代以来のテニス仲間に誘われ、久しぶりにテニスを楽しんだ。浦安の中央公園というところにあるコートだった。前に1、2度行ったところかと思ったら、別のコートである。市民が気軽に利用できるこうした市営のテニスコートがたくさんあるという。「浦安はある時期まで小さな漁村だったのでは。こんな立派な市営コートがいくつもあるのは、ディズニーランドのおかげで地方税がどっさり入ってくるから?」。初めて手合わせ願った地元の方に尋ねてみた。

 「工業団地からの税収が大きい。納税率の高さも全国有数」。浦安市民の納税意識、公共心の高さをさりげなく自慢された。

 テニスの後、コートのすぐ目の前にあるファミリーレストランで食事をする。テニスに誘ってくれた元同僚のほか、女性2人が一緒だった。編集者と元同僚の後輩に当たる通信社の現役記者と、もう1人は某地方放送局の報道部員だった方だ。その放送局は何度か訪問したことがある。「報道部員として若いうちから楽しい仕事ができた」という話はよく分かる。「今は、若い正社員の言うなり」。家族の都合により首都圏暮らしとなり、女子大生の就職先人気1位という企業で契約雇員として働いているということだった。

 さて、サラダ、パスタ、ピザなどを注文し、車で来た1人をのぞく3人がビールやワインを飲み勘定は、というと4,000円に満たない。1人あたりではなく、全部でだ。この業界の価格競争の熾(し)烈さをあらためて痛感する。

 レストランで皆と別れた後、京葉線沿いに舞浜駅から旧江戸川を越えて葛西臨海公園駅、さらに新木場駅までテクテク歩いてみた。京葉線沿いのこの付近が急速に変化した、というのがよく分かる。歴史を感じさせる建造物がほとんど見当たらない。

 編集者が幼少のころ、外食を楽しむなどということは滅多になかった。親類の結婚披露宴から祖父が持ち帰る折り詰めが、大変なおみやげだった気がする。外で食事をした方がむしろ安く済む。こんな時代がいつまでも続くものだろうか。

 地方放送局員だった方がいま契約雇員として働く人気企業も、待遇がよいのは正社員であればこその話だろう。安い外食などの生活に慣れきって気がついたら、子や孫たちは非正規社員・職員ばかり。なんて熟年、高齢者ばかりにならないだろうか。荒川河口にかかる長い橋を渡りながら、しばし考えた。

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