レビュー

編集だよりー 2009年3月16日編集だより

2009.03.16

小岩井忠道

 文化勲章受章者の花房秀三郎・米ロックフェラー大学名誉教授の訃報が、各紙朝刊に載っていた。

 氏をニューヨーク市内にあるロックフェラー大学に訪ねたのは、30年近く前になる。当時、多くの研究者の関心を集めていたがん遺伝子の研究成果ですでに日本国内でもよく知られていた。

 多額の研究費を確保するため毎年、研究助成金の申請作業が大変だ、と淡々とした口調で話していたのをよく覚えている。競争的研究資金というのが日本ではほとんどなかったころだったので、日米の研究者の違いが印象深かった。向こうの優れた研究者というのは、プロ野球の選手のようなものだ。しかるべき成果を出し続け、それを基に多額の研究資金を得て、大勢の研究者を抱え続けなければならないわけだから。

 氏に、やんわりと注意されたこともよく覚えている。ご本人とロックフェラー大学の特別研究員だった照子夫人(氏より先に亡くなられた)の年齢を尋ねた時のことだ。「米国では人を採用するときですら年齢は聞かないのが常識です」。経歴などを付記する記事に年齢を入れるのが、日本では当たり前だったので、この言葉に面食らったことを思い出す。

 インタビュー記事では、結婚してからも長年、共同研究者として歩んできた夫人についても当然触れたが、年齢だけは記さなかった。

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