昨年、初日の出を見るため目黒川沿いを下って東京湾べりまで歩いたので、ことしは途中から道を変えた。目黒川に沿って1キロほど下ると旧東海道品川宿と交差する。そこで右折し、北品川商店街を青物横丁まで歩く。品川宿の北寄り半分は北品川本通商店会となっており、こちらは前に歩いたことがある。しかし、南側は初めてだ。ところどころ駐車場やマンションになっているところがあるが、北品川本通商店会同様、昔の雰囲気をよく残しているのに感心する。商店会が協力して品川宿の保存維持に当たっているからだろう。
青物横丁まで歩いて広い通りを左折、海岸通りを横切り、さらに首都高速羽田線、京浜運河さらに首都高速湾岸線の上を渡り、さてこの辺で目指す「野外活動広場・青空野球場」へ入る道があるはず、と周囲を見回す。昨年は、目黒川にこだわったため、東京電力大井火力発電所に行く手をさえぎられてしまった。発電所の北側を迂回してほとんど東京湾の水面は目と鼻の先のところを探し当てたが、同じところでは面白くない。地図で見る限り、大井火力発電所に接して南側にある目指す広場はほとんど湾に面している。さえぎるものなどありそうもないから、さぞかし眺めもいいだろうと思ったわけだ。
しかしである。青空野球場があるくらいだから当然、すぐ分かるはず、と思えど、それらしい道がない。成算がないまま、企業の敷地と思われる道に入り込んだら、また元の公道に戻ってしまった。そのうちに空がだんだん明るくなってきた。探すといってもこのあたりはだだっ広く、都心で飲食店を探すというわけにはいかない。数十分うろうろした挙句、ついにギブアップとなった。来た道を京浜運河近くまで戻り、陸橋上から見た太陽は、見事なオレンジ色の光を放っていたが、すでに水平線からだいぶ離れているようだった。
海岸通を右折、京浜運河、高浜運河、目黒川に囲まれた天王洲アイルに着く。ここからは昨年、来たコースの戻りだ。天王洲公園と反対側の緑地の間を流れる目黒川を渡る途中、橋の上からふと川の上流方向を見て驚いた。目黒川の真上、両側のビルに挟まれた空間に雪をかぶった富士山が見えたのである。まるで額縁に納まった絵のようだった。
昨年もこの橋は反対側から渡ったのだが、東京湾の方向にしか注意が向いていなかったのだろう。来た方向を振り返れば気付くはずの、絶景を見逃してしまったというわけだ。
世の中明るいニュースはほとんどない。ことしの元旦はこれをもって最大の収穫としよう。