レビュー

特許に見る科学技術基本計画の効果

2008.11.10

 大学、公的研究機関の特許出願状況から、科学技術基本計画で重点領域とされた分野が特許出願でも多数を占めることが、科学技術政策研究所の調査で明らかになった。

 この調査「大学および公的研究機関からの特許出願の重点8分野別ポートフォリオ」は、2006年の特許出願が多かった上位52の大学と上位5つの公的研究機関を対象に06年と07年の特許出願状況を調べた。06年からスタートした第3期科学技術基本計画では、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野を「重点推進4分野」、エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアの4分野を「推進4分野」として定め、優先的に研究開発費が配分されている。

 調査結果によると、06、07の2年間で日本全体では約85万件の特許が出願されたが、このうち、調査対象大学・公立研究機関57の特許出願件数は全部で約1万2千件だった。特許出願の中で重点8分野が占める割合を見ると、日本全体では約45%であるのに対し、57大学・公立研究機関では74%に跳ね上がっている。日本全体では重点8分野の中で情報通信分野の出願が最も多いが、今回の調査対象となった大学・公立研究機関ではナノテク・材料分野の出願が最も多かった。

 大学や公的研究機関は民間企業に比べ、国の政策をより反映した研究開発を行う傾向にあるため、結果的に創出される特許も重点8分野の影響を強く受けたものになった、と科学技術政策研究所は見ている。

 大学の研究者が得た特許については、数年前までは95%が研究者個人や企業に帰属しており、大学、技術移転機関(TLO)帰属は5%にすぎないことが、科学技術政策研究所が東北大学を対象に行った調査で明らかになっていた。しかし、国立大学は04年の法人化後にその多くが大学帰属へと切り替わっている。01年以降次々と法人化している公的研究機関も同様で、その移行時期はさまざまだが、法人化後の特許は原則機関帰属として出願されている、と同研究所は言っている。

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