アルカディア市ヶ谷で開かれた「秋田の酒で乾杯!」という催しに参加した。秋田県の名門、秋田高校東京同窓会の主催だ。わが水戸の母校と秋田高校は、同窓会同士が姉妹関係にある(文書化されたようなものがあるかどうかは分からないが)。平安時代以降、わが郷里に君臨していた佐竹氏が関ヶ原の戦いを機に、徳川家康に疎まれ、秋田に国替えを命じられたのは有名な話だ。関ヶ原の戦いを挟んでそれぞれ400年間、水戸も秋田も同じ佐竹家と深い関係があった土地同士、というのが姉妹関係を結んだ理由である。どちらも旧制中学以来、130年以上の歴史を持つ高校だから、「県では一番の高校」と思っているもの同士。それが、もう一つの理由だろう。
寡作で知られる飯嶋和一の「神無き月十番目の夜』(1997年、河出書房新社)という滅法面白い小説は、突然の佐竹家国替えの時に茨城県北のへき地で起きた、うそかまことか大いに頭を悩ませるような話が展開する。
さて「秋田の酒で乾杯!」は、大学在学中の若い後輩と年配の先輩方との名刺交換会とセットになっている。先輩が後輩の就職相談などに乗ってやることで、世代を越えた同窓生のつながりを深めようという狙いだろう。こういうことはわが同窓会はやっていない。若い後輩からの会費納入がほとんどないわが同窓会にとっても大いに参考になる催しだ。
冒頭、男女30人ほどの大学生が自己紹介をした。お互いかつては男しかいなかったはずだが、わが母校同様、今は相当数の女性が通う高校になっているのが推測できる。
最初から前の方に並んでいた男子のあいさつが終わり、女性の番になったが、男どもは漫然と立ったまま。「男の学生は後ろに下がりなさい」。女性の先輩から厳しい声が飛び、ようやく男子学生が女子学生に場所を譲り後方に引っ込んだ。こういう命令をスンナリ発せられるのが同窓会のよいところだろう。
地元の酒造メーカーが寄付したらしい70銘柄の地酒にありつく前に、もう一つ出し物があった。秋田高校東京同窓会の会長で、テレビでも活躍している橋本五郎・読売新聞特別編集委員と同窓生である加藤日出男・若い根っこの会会長のクロストークだ。
「私は昔から劣等感を抱く3種類の人がいる。イケメンの人と音楽など芸術の才能がある人、それに髪がふさふさしている人だ」。橋本氏が、まず笑いをとる。79歳と氏よりはるかに年配の加藤氏は、黒々とした豊富な髪の持ち主なのである。その後は、ほとんど加藤氏の独演会であった。
ようやく、酒にありつく時間帯になり、橋本氏にあいさつをする。「高名なジャーナリストの先輩にお会いできてよかった」などと敬意を表したが、後で参加者の名前と高校卒業年が書かれた資料を見て、間違いに気付く。橋本氏の方が編集より1歳、若かった。
髪の多さで人の年齢を判断してはいけない、と反省する。それと、いつまでも自分を若いと思うな、とも。