レビュー

日本人3氏がノーベル物理学賞に輝いた理由

2008.10.08

 南部陽一郎 氏、益川敏英 氏、小林誠 氏の3氏にノーベル物理学賞が贈られることが決まった。この快挙について8日の新聞各紙朝刊は、3氏の業績が早くから内外に広く知られたものであり、受賞は遅すぎるくらいである、と一様に伝えている。

 「南部陽一郎 氏が『自発的対称性の破れ』をまとめたのは1961年、『小林・益川理論』の発表は73年。評価されるまで47、35年待たされた」(読売)など、と。

 同紙はまた「2004年のノーベル物理学賞の際、スウェーデン王立科学アカデミーは発表資料の中で『ナンブの理論は正しかったが、おそらく早すぎた』と異例の長文で言及」していたことも紹介している。このことについては、日経も談話記事の中で、駒宮幸男 氏・東京大学素粒子物理国際研究センター長の次のような言葉を載せている。「2004年のノーベル物理学賞は素粒子のクォークの振る舞いに関する研究で成果を上げた米国人らが受賞したが、その基礎の理論は南部先生のオリジナルな仕事だ」

 益川 氏、小林 氏の業績についても「小林・益川理論は、現在も素粒子分野の論文の被引用件数で世界歴代2位を誇る」(産経)など、その重要性が詳しく紹介されている。

 では、なぜ、ことし3氏がようやく受賞の栄誉に輝くことになったのか。益川 氏が記者会見で次のように語った、と複数の新聞が伝えている。「ノーベル賞の出し方には規則性がある。昨年までは絶対ないと思っていたが、ことしはある程度予測していた」(東京)

 規則性とは何かまで益川 氏は明らかにしなかったようだが、なぜことしだったかを推測する事柄を、各紙の記事から探すことができる。3氏の研究業績の根源にある疑問「質量の起源」を探る「壮大な実験が、この9月から、ジュネーブにある欧州合同原子核研究機関(CERN)の新しい加速器LHCで始まった」(朝日)。「大型加速器『LHC』は、陽子同士を高速に近い速さで衝突させ、宇宙誕生直後の状況を再現しようと試みている。その過程でCP対称性の破れがどのように生じたか、課題が解明されることが期待される」(毎日)というのだ。

 日経は、前述の駒宮幸男 氏・東京大学素粒子物理国際研究センター長の次のような見方を介している。

 「来年ごろにも、南部先生の理論をもとに存在が予測されている未知の素粒子が実験で証明されるはず。今回の受賞は、そのタイミングだからではないか」

関連記事

ページトップへ