レビュー

編集だよりー 2008年8月2日編集だより

2008.08.02

小岩井忠道

 映画「闇の子供たち」(阪本順治監督、梁石日原作)が公開された。公開に先立って全国紙に載った映画評を読むと、いずれも高い評価を与えている。

 編集者は、1月以上前に日本記者クラブでこの作品の試写を見たのだが、いままでこの欄でも紹介する気になれなかった。描かれている内容があまりに悲惨だったからだ。

 タイで人身売買された男女のこどもたちが、幼児買春の相手をさせられた上、中には、臓器移植のドナーにもさせられているという衝撃的な内容である。わずかな報酬で腎臓を提供し、悲惨な生活を送る人々が東南アジアの国にいるという話は、これまでも新聞で報道されていた。しかし、それは腎臓が2つあるから起こりえた悲話である。この作品で描かれている心臓の提供者は殺されるのだ。

 この作品の内容と現実との間にどのくらいの違いがあるのか、仮に生きたまま心臓移植のドナーにされる子供がいるというのが事実なら、どのくらいの頻度で行われているのか、考え込んでしまった。

 人身売買や売(買)春がおぞましい行為であることは言うまでもない。特に日本人の若い男が幼女を買ったあと、裸のままパソコンに向かい、たった今行ったばかりの行為を打ち込んでいるシーンには寒気がした。さらに、殺人とペアになった臓器移植となると救いはない。ここで描かれているような臓器移植は、れっきとした医療機関に働く多数の人々が加担しない限り、起こりえない話である。一人の人間を救うのに、別の人間を殺してしまう。医師をはじめとする医療に従事する人々が、ぐるになってこんなことができるものだろうか。

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