レビュー

編集だよりー 2008年3月27日編集だより

2008.03.27

小岩井忠道

 「アルコール依存症経験者の多くに共通することがある。水を飲まないということだ。酒をよりうまく飲みたいために」

 昔、医学に詳しい先輩記者から聞いて笑ったことをよく思い出す。久里浜アルコールセンターなど医療機関側だけでなく、元アルコール依存症患者たちの集まりなども取材した人の言葉だから説得力があった。今になってみると編集者自身、大いに思い当たる。朝、職場でパソコンに向かう前、自動販売機で求めた紙コップ一杯のお茶(無料)をゆっくりと飲んだ後、日が暮れるまで一滴も水を飲まない日も珍しくない。コーヒーのようなうまくもなければ、栄養も全くない飲み物が好きな人間の気が知れないという口である。

 水分はとった方がよいと分かっていて、水を飲まないのはなぜか。映画「酒とバラの日々」のジャック・レモン、リー・レミック夫妻のようには絶対にならない。毎晩、酒を飲んでも、と信じているからだ。父親の系統は、弟、息子を含めアルコールに弱い人間ばかりだし、自分自身、日本酒でも焼酎でもコップ2杯くらい飲むともう十分という気になる。最近はたった1、2杯で頭が痛くなることもある。

 ただし、これは一人で飲む場合に限ってのことだ。相手がいればいくらでも飲めるのが不思議でもあり、かつ大いに問題なのだが…。

 NHKラジオの早朝番組を聴いてまた笑ってしまった。この何日か続けて武藤芳照・東京大学大学院教授が、「転倒を防いで健康長寿〜転倒予防7か条」という話をしている。今朝は「年寄りの冷や水」という格言がいかに当を得ているかということを、実に分かりやすく説いていた。水分は意識してとらなければならない。特にのどが渇いたという感覚すら鈍くなっている高齢者は、ということである。

 「ビールを10杯飲んだら、何杯分の水が尿として排出されるか」。武藤教授の問いに、アナウンサーたち同様、編集者も答えを間違う。11杯分の水、つまり飲んだビール以上の水分を体外に出す、というのである。

 アルコールに利尿効果があるということは知っていた。ビールはテニスの後くらいしか飲まないことにしている。ビールそのものがほとんど水分だから、飲んでいる途中で何度も手洗いに立つのは面倒、というのが主たる理由だ。しかし、酒なら何であれ結局、尿として体内の水分を余分に排出してしまうことに変わりはない。運動の後、ビールを飲んで水分を補給したような気になるのはほとんど意味がない、ということだろう。

 武藤教授の話を聞いて、もうひとつ大いに参考になったことがある。寝た後、夜中に手洗いに立つのが何ともおっくうで、これはやせているため膀胱も小さいからだろうとあきらめていた。しかし、よく考えてみると酒を相当飲んで寝た夜は、朝まで目が覚めないことが多いような気がする。飲んだ量に比例して体内の水分も排出しているわけだから、布団に入る前にしっかり排尿を済ませておけば、朝まで尿意などもよおさずぐっすり、と考えると納得!だ。

 快眠のためにも、規則正しい飲酒は続けなければ、ということだろうか。

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