レビュー

15歳の応用力はなぜ低下しているのか

2007.12.05

 4日公表された15歳を対象に実施した経済協力開発機構(OECD)の国際的な学力調査(PISA)結果から、日本の高校生の学力特に応用力低下があらためて問題になっている。

 調査結果は、5日の新聞各紙朝刊でも多くの紙面、行数を割いて報じられた。しかし、果たしてどれほどの国民がこの結果に衝撃を受けているだろう。

 「科学の『心』は論理的思考能力だが、日本ではその弱点が露呈した。数学でも方程式の解き方といった技術を教えることにとどまっていないか。科学をいかに発展させるか、新しい分野を開拓しようというマインドの西欧の教育とは違いがある。日本社会で起きている様々な問題も、論理的思考力の欠如が原因で起きているように見える」

 読売新聞の5日朝刊に載ったノーベル物理学賞受賞者、江崎玲於奈・横浜薬科大学長の談話である。

 最近、有馬朗人氏(元文部科学相、元理化学研究所理事長、元東京大学総長)もあちこちで、日本の教育、研究開発に投じる金の少なさを指摘し、科学技術軽視の日本社会の仕組みや国民意識に警鐘を鳴らしている。氏は、政治家にも高級官僚にも大企業の役員にも理系出身者が非常に少ないといった例を並べて、文系出身が圧倒的に優位な日本の社会構造をよくやり玉に上げる。こうした現実に手を付けず、さらに教育、科学技術にかける費用も抑えて、どうして理数系の勉強や研究が大事だなどと子どもたちや若者に言えるか、というわけだ。

 今回の調査結果で、各新聞が一様に報じていたのが、学力以前の科学に対する関心、意欲の問題である。「科学について学ぶことに興味がある」という生徒は半数にとどまり、「30歳の時点で科学に関連した職についていることを期待している」という生徒に至っては8%しかいない。OECD加盟国平均の25%と比べると相当な差だ。

 日本は文系出身者が優遇される国だから理数系に力を入れてもしようがない。高校1年生の大半が、そこまで気を回して自分の将来を考えるものだろうか。科学的リテラシーや数学的リテラシー、つまり江崎氏がいう論理的思考の重要性といったものに、両親をはじめ身近な大人の大半があまりに無関心。そう見切ってしまっている子どもや若者が、科学に対するプラスイメージを持てなくなっている、ということはないのだろうか。

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