レビュー

産学連携以外、科学技術の現状に厳しい評価

2007.11.02

 科学技術を指導する人から第一線の研究者たちの多くが、日本の研究環境、研究基盤の整備について不十分と見ていることが、1日公表された科学技術政策研究所の調査で明らかになった。

 この調査は、昨年度から始まった第3期科学技術基本計画(5年間)の課題達成にかかわる状況の変化を追うのが目的で始まった。大学学長や研究所長クラスから第一線の研究まで430人を選び、今後5年間、毎年、一度質問に答えてもらう。今回は、第1回の調査として昨年末に実施された。

 それぞれの問いに対し、不十分という評価から十分という評価までを6段階で答えてもらう。この結果を10段階評価に換算し、その平均値(指数)を出した。

 評価が高かったのは、産学連携が大学の研究活動、教育活動に良い効果をもたらしているかを尋ねた項目で、研究開発活動(指数6.8)、教育活動(指数6.5)といずれも高い値を示した。特に民間企業の回答者が、研究開発活動の指数7.6、教育活動の指数7.7と高い評価を与えているのが目立つ。

 しかし、それ以外は、5以下の指数となっている。最も評価が悪いのは、優秀な外国人研究者の受け入れの数が十分かどうかについてで、大学1.9、公的研究機関2.4と不十分とみなされていることがはっきり出ている。

 外国人研究者の受け入れと同様、第3期科学技術基本計画でも重視されている女性研究者の活躍促進については、環境の改善は不十分(指数2.8)、人事システムの工夫についても不十分(指数3.5)と見られていることが分かった。女性研究者だけの回答を抽出すると当然ながら評価はさらに厳しく、環境の改善については、指数1.5と際だって評価が低い。

 年齢が30歳までの若手研究者の自立と活躍の場を与える環境整備についても、大学が指数2.9、公的研究機関が指数4.1と、特に大学の取り組みが遅れている現状があらためてはっきりした。博士課程後期の人材育成のための環境整備(経済的支援、課程終了後のキャリア形成支援など)も、明白に不十分(指数2.2)と見られている。さらに、博士号取得者の多様なキャリアパス選択を可能にする環境整備についても、同様に不十分(指数2.0)とされている。

 第3期科学技術基本計画の柱になっているイノベーション創出のための取り組みについても、厳しい評価が明らかになった。

 現在の資金配分方法では、イノベーションの源となる基礎研究の多様性が必ずしも確保できていないとみられている(指数2.2)。自由発想型研究の成果を次の段階につなごうという研究者の活動は必ずしも活発でない(指数3.1)とされ、また、日本の研究開発の成果は、十分にイノベーションにつながるに至ってなく(指数3.0)、特に研究の各段階をつなぐ研究費制度の仕組みが不十分(指数2.2)とみられていることがはっきりと出ている。

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