レビュー

ICT産業のガラパゴス化変わらず?

2007.10.30

 ことしの携帯電話の世界販売台数は前年より1割強増え、年間で11億台に達する見通しになった、と29日の日経新聞朝刊がロンドン特派員の記事で伝えている。

 記事によると「02年に約4億台だった世界販売台数は5年で約2.7倍に増え、世界で6人に1人が携帯電話を保有する計算になる」という。

 携帯電話といえば「ガラパゴス化」という言葉が、数年前から使われているようだ。「ガラパゴス諸島。ダーウィンの進化論であまりにも有名な,太平洋に浮かぶ島々である。外界と隔離された中で独自の生態系とルールが形成され,それに適応すべく生物はほかの場所では見られないような形質を獲得していった。『日本は携帯電話におけるガラパゴス諸島だ』。こう評する人がいる」。日経エレクトロニクス2004年3月15日号のカバーストーリーにこんな記述がある。

 この「ガラパゴス化」という言葉が、26日開かれた先端技術産業戦略推進機構の研究会「情報通信部会」の講演でも聞かれた。講演のテーマは「情報通信産業の国際競争力強化」で、講演者は、秋本芳徳・総務省情報通信政策課長である。

 秋本氏は、日本の情報通信技術(ICT)産業には「名をとって実がとれない現状」があるとして、苦境の要因や総務省の進めるICT改革促進プログラムについて説明した。

 氏によると、日本の主要メーカー7社のパソコン売上高合計(3兆円)は、米国のデル社の売上高(4.7兆円)を下回る。コンピューター・ソリューションでも主要5社の売上高合計(6.4兆円)が、米国のIBM社の売上高(10兆円)に及ばない。携帯電話も同様で、主要8社の売上高合計2兆円は、フィンランドのノキア1社の売上高2.6兆円に及ばず、米国のモトローラ、韓国のサムスンそれぞれ1社の売上高1.8兆円とあまり変わらない。携帯電話に関しては、標準化に成功した3G(第3世代)携帯は、特許の多くを他国企業が保有し、多額のライセンス料支払いを余儀なくされている、という。

 さらに、日本企業の携帯電話の海外売上が国内売上の3%でしかない例も挙げて、日本のICT産業の国内市場偏重が苦境の要因と断じている。「グローバル市場との親和性に乏しい」日本のICT産業を、「閉鎖系内で特有の主が繁栄する『ガラパゴス諸島化』」という言葉で表現した。

 秋本氏の講演の後、質疑応答でどのような苦境打開策があるか意見交換が行われたが、座長の辻井重夫・情報セキュリティ大学院大学学長の次のようなコメントが記憶に残った。

 「日本人の民族性は変わりようがない。制度を変えないと駄目」

 政府の後押しがないとICT産業は世界市場で優位に立つことができない、ということなのだろうか。

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