旧友に誘われ、改装なったサントリーホールでNHK交響楽団の定期公演を聴いた(24日夜)。
B級鑑賞者なので、いつものように音楽そのものとずれたところに注意が向く。この交響楽団を聴くのは久しぶりだったせいか、演奏者と聴衆の構成が気になった。
N響の演奏者もほとんど男ばかりだが、聴いてる方も男がえらく多いね」と休憩の時に言ったら、「男も多いけれど年寄りが多い」という言葉が旧友から返ってきた。確かに見渡すとわれわれよりさらに上、という男性の姿が目立つ。長い列ができていた。女性の列は見慣れているが、トイレの順番を待つ男性の列がロビーまで長々と延びている風景は珍しい。手洗いに行く間隔も年齢相応に、という人が多いということだろう。
この日の演目は、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第4番だった。鑑賞力はまるで向上しないものの、鑑賞年月だけは年齢相応にある。この2曲くらいになるとほとんどの楽章に覚えのある旋律が出てくるので、途中で居眠りという心配はない。
N響というのは、公演日程が、A、B、Cの3つに分かれている(会員が多いので、1回の公演では収容できないということだろうか)。それぞれ演奏曲目も異なる。ほかの2つの公演で演奏される曲の作曲者をプログラムでみてみたら、曲目こそ違っても、ベートーヴェンとブラームスという全く同じ組み合わせがもう一つあった。残る一つはモーツァルト、ブラームス、R.シュトラウスという顔ぶれだ。偶然なのだろうが、高齢会員向けの曲目選定、という気がしないでもない。
この日、ベートーヴェンの協奏曲でヴァイオリンを弾いたのは女性で、アラベラ・美歩・シュタインバッハーという名前から推して両親のどちらかが日本人のようだ。容姿は西欧風で、スタイルのよい細身の体を揺らしながらのきりりとした演奏ぶりに感心した。演奏技術も多分、申し分ないものなのだろうが、演奏家というのは、ソロで認められるには容姿も相当な要素になるのでは、とまた音楽の神髄とはずれたことに思いをめぐらしてしまった。
考えてみれば見れば、スポーツの世界も似たようなところは、あるのではないだろうか。種目によってだいぶ差はあるにしても…。さらには政治家でもテレビ映りが悪いと、今の時代、相当損をしていそうだ。
そう考えると、研究者の世界というのは、公平で分かりやすくないだろうか。少なくとも研究者としての評価に容姿が影響を与えるということは、まず考えられないだろうから。