「NHK交響楽団の最も良い演奏が聴けるのは欧州公演」という話に、大いに納得したことがある。
昆明交響楽団の演奏を東京オペラシティコンサートホールで聴いた。毎年この時期開かれているアジアオーケストラウイークという催しである。
何回か書いたが、プロのオーケストラの演奏を聴いて良かったのか悪かったのかという判断ができるほどの耳はない。いつもすばらしい演奏にしか聞こえないから、得だ。中でも、このアジアオーケストラウイークは、毎年、聴いて、とりわけ満足している。どうして良いと思うか。皆、一生懸命に演奏しているように、見えるからだ。
特に、演奏が終わって拍手を受けるときの演奏者たちの表情がよい。うれしそうな、満足したような表情の人たちが多く、それだけでこちらも豊かな気分になれる。
韓国、中国などアジアの国々の経済発展は急速で、いずれ日本も追いつき、追い越されるという事態も十分ありそうだが、クラシック音楽の世界は、まだ、しばらくは日本の方が、先輩格といえるのではないだろうか。だから、文化庁が資金援助するこの催しが毎年、開かれている意味もあるのだと思う。そう考えれば招待されたアジア各国の交響楽団が一生懸命に演奏しているように見えても、不思議ではないと思う。今年は、初日(2日、韓国・KBS交響楽団)は、満員だったそうだ。
海外勤務が長かった友人夫妻に、ある時、このアジアオーケストラウイークの話をしたことがある。その時に、夫人から帰ってきたのが、「NHK交響楽団のもっとも良い演奏が聞けるのは欧州」という冒頭の言葉だったというわけだ。