編集者の主たる情報源は当サイトの「プレスリリース」のページと各新聞、早朝のラジオといったところだ。これらより先に新しい情報を得るなどということはほとんどない。ところが、朝日新聞夕刊2面の連載記事「天空に生きる-チベット最新事情」を読んで、こういうこともたまにはあるか、と驚いた。14日の編集だよりで紹介したドキュメンタリー映画「ブラインドサイト-小さな登山者たち」(7月下旬公開予定)に出てきた盲学校生の1人が、登場していたからだ。盲目にもかかわらず、エベレストの隣の山へ登頂を挑んだ…。
試写会でもらったパンフレットを読み返してみたが、盲学校生の名前までは出てなかった。記事はなぜかこの映画のことにも登山のことにも触れていない。百%確かとは言い切れないが、映画の中で最も印象深かった生徒の1人にまず間違いないはずだ。
映画ではよく分からなかったことが、朝日の記事で納得する。現在、盲学校を卒業して希望通りマッサージ師になっているこの青年、方青洪さんは、映画の中では最初、最も扱いが難しい生徒と紹介されていた。「背中などにたばこの火を押しつけられてできたと見られる多数のやけど跡がある」と登山を支援するサポーターだったかが映画の中で言っていた。
この虐待を繰り返していたのは「輪投げゲームを路上に広げて商売する重慶出身の若い夫婦」で、父親は旅先で一緒になったこの若夫婦のもとに息子を置き去りにしてしまう。どういう扱いをされるか多分承知の上で。
その後、毎日物乞いを強いるこの若夫婦から逃げ出し、チベット人に助けられて盲学校へ入学する。映画の中で、方青洪さんが父親を捜し当てて再会する場面があったことは、14日の編集だよりで紹介した。「○○で見失い、警察にも頼んで探してもらったが見つけられなかった」。父親のいい訳に、宿に帰ってから泣いた気持ちが、朝日の記事によってなおさらよく理解できたような気がする。
記事には、父親と再会した話も出てこない。記者に話したくなかったのだろうか。(朝日新聞の引用は東京版から)