シンポジウムもさまざまだ、とあらためて感じた。SciencePortalの編集にかかわってこの1年弱、のぞいたシンポジウムの数はそこそこの数になる。きょうの「大学発ベンチャー活性化シンポジウム」の中のパネルディスカッションが、一番聞き応えがあったという印象だ。
司会者は、当サイトのオピニオン欄に登場していただいたこともある西岡郁夫氏(モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長)だった。
まず、すぐにディスカッションに入った司会の進行術がすばらしい。
パネリストの顔を立てて、全員にまず順繰りに“冒頭陳述”の機会を与える。こういうよくあるスタイルだと、共通の心理がパネリストたちに働くのだろうか。きちんとしたことを話さなければ、という…。原稿を読むような堅苦しい話に終始して、機微な話や、本質を突いた刺激的な発言などまず出ない。これで30分も40分も時間を食ってしまうから、聞いている方はつい眠気を、ということになりかねないわけだ。
それがなかった今回は、結果的に「なるほど」と思わずうなずくような発言が、司会者、パネリスト双方からたくさん聞けたように思う。
「ベンチャーキャピタルは死んだ」(原丈人・デフタ・パートナーズ会長)。米国のベンチャーキャピタルがうまくいっているなどと思っては、時代遅れ。米国では1990年代後半から、ベンチャーキャピタルが肥大化、保守化しており、株式公開やM&Aなどで確実な資金回収が見えてこない限りリスクを取らなくなっている。日本は、米国などを手本にせず、独自の新しい仕掛けを考えないと…。そんな檄(げき)、と感じた。
「企業にいたことがあるからよく知っているが、日本の企業は大学を信用していない。大学との共同研究をしても、実際には相手にしていないというのが実態ではないか。大学の先生も、企業に頼りにされていないのだから論文書いていればよい、という姿勢になっているのでは。そういう大学の先生たちが、急にベンチャーで頑張れるものだろうか」(西岡郁夫氏)
「基本的には頼りにされていないだろう。ただ、世の中のためになることをしたいという気持ちでやっている。ベンチャーをやるような人間を主体的、ボジティブに評価する人間は大学には少ない。文部科学省がこういっているから、ということで評価する人はいるが、それでも気にくわないという人が7割くらいだろうか」(森下竜一・大阪大学大学院医学系研究科教授、アンジェスMG株式会社取締役)
こんなパネルディスカッションばかりだと、大勢を集めた意味も十分だろう。主催者はまず司会者の選定で大いに悩むだろうが。