レビュー

編集だよりー 2007年4月5日編集だより

2007.04.05

小岩井忠道

 日本人と米国人とで、どちらが数字好きか、あるいは数字に弱いだろうか。

 トムソンサイエンティフィック社と、日本の生物系学術誌の電子パッケージ「UniBio Press」が共催したシンポジウム「学術ジャーナルを計る:インパクトファクターの意義とジャーナル評価」(ハイライト「文献引用件数の半分以上は300の学術誌に集中」参照)を傍聴しながら、ふと考えた。

 最近、論文の引用数というのがよく引き合いに出される。トムソンサイエンティフィック社というのが、そのデータの発信元らしい。同社のホームページを見たら「世界最大級の特許および学術文献情報データベース・分析システムを提供」している会社と書いてある。

 シンポジウムのテーマになっていた「インパクトファクター」の基になるデータと、個々の研究機関や研究者の論文引用数の基になっているデータが、共通のようだ。

 面白いことに、トムソンサイエンティフィック社の講演者は「インパクトファクターは、雑誌の影響度を示すもので、個々の論文や研究者を評価するための指標ではない」とさかんに強調していた。確かに、引用数の多い研究者ベスト○○といった情報が、それ自体で直接、収益に結びつく商品とも思えない。

 ところが、実際には、同社の主張通りに研究者の世界では受け止められていないようだ。

 世界材料研究所所長会議(2005年6月につくばで開かれた、世界材料研究所フォーラムのことか?)で、米オークリッジ国立研究所など各国の名だたる研究所の所長や副所長が、それぞれの研究所の研究成果を自慢していた。「インパクトファクター」の数値を巧みに使って…。そんな報告も、シンポジウムでは聞かれた。

 論文引用数を気にかけているのは、日本の研究機関、研究者たちだけではなさそうだということが、うかがわれる。

 そこで、トムソンサイエンティフィック社、つまりは米国人の数字の利用法が、気になった次第だ。

 スポーツ好きの人なら、先刻承知かもしれないが、日本の新聞のスポーツ面というのは、競馬などギャンブルを除くと記録類、つまり数字が少なく、かつ野球だけに偏っているように見える。米国の新聞は、だいぶようすが違う。

 例えばバスケットボールの場合、試合結果を示す以外の数字が新聞に載るのは、日本の場合、全日本選手権の決勝くらいだろう。それもどの選手が何点得点を上げたか、といった程度である。ところが、米国のプロバスケットの場合、選手の得点どころか、リバウンドの数、それもオフェンスの時と、ディフェンスのときに何本取ったかまで分けて、報じられているのが珍しくない。3点シュートやアシストの数も。それが毎日、全試合、書いてあるのだ。

 いったん公表された数字には、結構弱い。その数字だけが一人歩きしがち。そんな傾向は、日本も他の先進国も似たようなものかもしれない。しかし、数字をしっかり商売につなげるという点では、どうだろうか。米国(人)の方が一枚上手なのでは。

 そんなことを、つらつら考えてしまった、という次第だ。

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