国際宇宙ステーションに関する話題が目につきだした。きょう当サイトに掲載したニュースとハイライト(小林智之氏)も、国際宇宙ステーションに関するものだ。
ハイライトで紹介した小林氏の講演があった「宇宙ことづくりフォーラム」(3月30日)には、宇宙飛行士である向井千秋さんも講演者およびパネリストとして参加していた。
「どんな世界でも100人に1人や2人変わった人がいるように、宇宙飛行士にもいます。しかし宇宙飛行を経験した後、再び宇宙に行ったら、また淡々と仕事をこなす。そんな人たちが大半です。伝道師になったような人も確かにいますけど」
宇宙飛行の経験と宗教的なものに関する会場からの質問に、向井さんが答えていた。質問者、向井さん双方の念頭に、立花隆氏の有名な著書「宇宙からの帰還」(1983年、中央公論社)があったのだろうと推測する。
「宇宙からの帰還」には、宇宙飛行を体験した後、伝道者になった人、超能力の研究者になった人、さらには精神が不安定になってしまったような「変わった人」たちが登場し、立花氏のインタビューに答えている。かつてこの本が話題になったとき、親しい大新聞社記者が、「先にやられた、と思った」と編集者に語っていたのを思い出す。新聞社の科学記者が書かなければならない記事を、フリーのジャーナリストに書かれてしまった、という悔しさを隠さず。
「立花隆のすべて」(1998年、文藝春秋社)を読み返してみた。作家の日野啓三氏が「宇宙と人類との新しい契約の福音書だ」あるいは「宇宙とは…人類がより高次の意識(より深層の意識でもある)に覚醒する場所、あるいは本来の故郷だ…」などと、この著書と立花氏を褒め上げている。
アポロ計画初期の宇宙飛行士たち、さらにはその飛行士たちの宇宙での体験談、その後の言動に特段の思いを重ね合わせる人々。彼らと、宇宙を仕事場の一つ、と“冷静”にとらえる向井さんとの差が、編集者にとっては何とも面白かった。
「宇宙からの帰還」に登場した宇宙飛行士たちの体験談とその後の人生は面白い。ただ、それをもって、宇宙がとてつもなく特別な場所だとまで言えるものだろうか。日野啓三氏のように「人類がより高次の意識に覚醒する場所」などと。
この本を読んで以来、実はずっとそんな思いを抱いていたこともあって。