3人目の子供が生まれたら100万円、4人目は300万円、5人目は500万円の出産祝い金を出す−。
朝日新聞28日朝刊1面に載ったソフトバンクの画期的な育児支援策である。「ホーッ。500万円ねえ」。感心した読者も多いのではないだろうか。
同じ28日の日経新聞1面トップは、松下電器が同じく4月1日から、約3万人の社員を対象に在宅勤務制度を導入する、という記事だった。「育児や介護などで通常勤務が難しい社員にも仕事を継続できる環境を提供し、少子高齢化に対応した人材確保策の目玉とする」
こちらも相当に進んだ制度だろう。同日早朝のTBSラジオ番組「森本毅郎スタンバイ」が、両社の取り組みを早速、詳しく紹介していた。
松下は、「今春の労使交渉で千円の賃上げ全額を子供のいる社員への手当に配分」しており、そちらでも関心を集めている。
もう四半世紀も前の話だが、当時勤めていた通信社で、労働組合の書記長をやらされたことがある。役員、中央執行委員すべてが1年で交代。そんな透明でわかりやすい労組だが、書記長というのは委員長とともに、専従である。しゃべり慣れない言葉も吐かなければならないし、その間、本業の記者活動も中断とあって、だれしもやりたくない。
ほとんどすべての人間は逃げ回り、しかしながらだれかが陥落、1年間のご奉公を承諾させられる。こうした委員長、書記長選びの光景が、毎年毎年繰り返されていた。
当時、組合員の強い声が、「家族手当反対」だった。既婚男性にしか支給されない家族手当は、不公平だ。女性は、既婚、独身を問わず、さらに独身の男性も、そうみなしていた。実際、いったん会社が示した家族手当を拒否し、全員が万遍なく恩恵を受ける本給に組み替えて回答させた年もある。当然、われわれ執行部の賃上げ要求も、本給のみだった。
さて、そんな折、夫人を亡くした組合員から「父子手当」を社に要求せよ、という具体的な注文が上がってきた。母子家庭には、公的な補助、支援の仕組みがあるではないか。それに相応するものが全くない悲惨な「父子家庭」に対する補助を、という切実な要求である。
そりゃそうだ、ということになり、賃上げとは別の要求案に盛り込んだところ、思わぬ猛反発を受けた。女性組合員からである。
女性は、既存の家族手当による不平等をずっと受け続けているのに、さらに男性に対する新たな手当を要求するとは何事か、という怒りである。
「父子手当」が結局どうなったかは、忘れてしまったが、女性陣から受けた激しい追及は、よく覚えている。(朝日、日経新聞の引用は東京版から)