レビュー

編集だよりー 2007年3月23日編集だより

2007.03.23

小岩井忠道

 タミフルと異常行動の関連性を厚生労働省が否定する根拠とした調査結果は、統計学的に見て本当に信用できるのか。

 そんな趣旨の記事(レビュー「統計処理の妥当性だれが再評価?」)を書いた後、送られてきたばかりの日経サイエンス誌5月号を読んだら、「いまどき科学世評」欄で、塩谷喜雄・日経新聞論説委員が、同じような疑問を呈していた。より具体的に。

 問題の調査は、厚生労働省の研究班が昨年10月にまとめた「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究報告」である。

 塩谷氏は「報告のタイトルでもわかるように、この調査はタミフルの副作用にターゲットを絞ったものではない。インフルエンザ脳症や高熱による異常行動なども混じった中から薬の副作用の有無を検証するには、最初のデータ集めからきちんとした設計が必要だ」と、指摘している。

 あらためて思うのは、こんなことを当事者たちが、まず考えなかったのか、ということだ。

 「今年の2件の事例を受けて、新しい研究計画を最初から練り上げるのが、医薬品のリスク管理を担当する役所の責務だろう」

 塩谷氏は、厚生労働省の責任を厳しく追及している。

 厚生労働省にしっかりしてもらわないと。そう思う人は多いと思う。しかし、アカデミズムもまた、もっと積極的な役割を果たさない限り、この種の問題は改善しないのではないだろうか。

 安全・安心な社会を作り上げるには、役所だけではなく、大学や研究機関の研究者たちが、自分たちの社会的責任というものをもっと強く感じないと。

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