政府や大企業のやることをめったに褒めない評論家、内橋克人氏が、NHKラジオ番組「朝一番」で、愛知県豊田市の取り組みを大いに評価していた。
豊田市といえば、トヨタ自動車の“城下町”というのが大方のイメージではないだろうか。初めて知ったことだが、この豊田市に大きな変化が起きていた。昨年4月、周辺の6町村と合併した結果、人口は1割ちょっとしか増えないのに、市の面積は一挙に3倍以上に膨れあがっていたのだ。
内橋氏が、高く評価していたのは、豊田市が合併で一挙に増えた山間地域を積極的に活用して「森づくり」計画を進めていることだった。合併によって豊田市の森林面積は6倍、人工林面積は13倍になった、という。
森づくり計画の一環として「とよた森林学校」というのも、合併して市の一部になった山間地区につくられた。森づくりのための人材育成講座や、森の応援団コース講座などができ、これが都市部に住んでいた団塊の世代を引きつけている、という。
編集者が中でも感心したのは、都市部の子どもたちに一定期間、山間部で生活させる試みも始まっているという話だった。仙田満氏(建築家、日本学術会議会員)が、このサイトのインタビュー欄で、大切だと強調していたことが、一つの市の中で実現しているのだ。
自然とのふれあいを忘れてしまっている都会の子どもたちに、いなか暮らしを経験させたい。できれば長期間。戦時中、都会の子どもたちが経験した集団疎開と同様の、という。
確かに、自然の中で暮らす経験が、子どもの成長にとって大きな意味を持つことは、実感としてわかる。いなか育ちだから。
しかし、戦時中という異常事態においてならともかく、今の平穏な時代にはとてもとても…。仙田氏の話に正直、そう感じたものだ。
しかし、一つの市の中でならどうか。何が何でもやる、と市長が決めたら、自治体同士の面倒な話し合いなども必要ない。
豊田市に住む団塊世代もうらやましいが、子どもたちはもっと幸せかもしれない。
寝床の中でラジオを聞きながら、思った。