北陸電力の原子力発電所臨界事故隠しは、やはり社会に大きな衝撃を与えている。
事故が明るみに出た翌16日の新聞各紙の朝刊でも詳しく報じられるとともに、主な新聞がそろって社説でも取り上げている。
いくつかのミスが重なって起きたことが、明らかになりつつある。しかし、さらに重大な問題は、これほどの事故を公表しなかったことにある、とする論調が目立つ。
「専門家が想定したこともないトラブルという。そうであるなら、原因を徹底的に調べて、再発を防ぐことがまず大切なはずだ。…想定外の事態にきちんと対処することは、同種のトラブルを防ぐ貴重な教訓になる。失敗は最良の教科書だ。トラブルを直視することを恐れてはならない」(読売新聞)
「群を抜いて悪質な隠蔽である。深刻な事故を隠したことで、その情報が生かされず、新たな事故防止の教訓にならなかったからだ。…トラブル情報は国内のみならず、世界中の原発で共有する必要がある」(朝日新聞)
「事故は核燃料加工会社、ジェー・シー・オー(JCO)の臨界事故の三カ月前。報告されれば臨界事故の警鐘となりえたはずでもある」(日経新聞)
「原発事故は、その情報を国内だけでなく世界で共有することで、再発の防止につなげられる。情報隠しは、その機会を奪うことだ」(毎日新聞)
社説以外の記事にも、今回の事故隠しによるマイナス面を的確に指摘している記述がある。発電所長以下の組織ぐるみの隠蔽工作のため「運転業務日誌などに記録は全く残されなかった。今回は職員の証言から、中性子の計測記録などを探し出したが、いまだに詳細は把握できていない」(朝日16日朝刊)。
事故の貴重な教訓を生かすために必要な情報が、8年もたったいま、どれだけ残っているのか、あるいは復元できるだろうか。
さまざまな領域、組織で「第3者による評価」ということが、当たり前になりつつある。
「内部だけでなく、外部の第3者を加えた検討も必要だ」(毎日新聞社説)
こうした指摘は、北陸電力だけでなく、原子力発電所を抱えるすべての電力会社の安全管理体制にも、求められる最優先事項ではないだろうか。(各新聞の引用は東京版から)