シンポジウムは講演者、パネリスト、司会の人選でほぼ成否が決まる。経済社会総合研究所主催の国際フォーラム「イノベーションとその取り組みをめぐる国際動向」をのぞき、あらためて感じた。
基調講演者(パネリストでもあった)、司会とも全員、英語なので、同時通訳にメモが追いつかず一苦労したが、随所になるほどと思う発言があり、感心した。
講演者は、黒川清・内閣特別顧問と、米国と欧州連合(EU)から1人ずつ。黒川氏は、政府の「イノベーション25戦略会議」座長という枢要な立場にあるものの、政府べったりではないのはいつもの通りである。さらに、米国の代表がAAAS(米科学振興協会)の科学・政策プログラム部長だったことが、このフォーラムをだいぶ面白くしていた。
AAASは、名だたる科学誌「サイエンス」の発行元である。テイチ部長が講演で言っていたように「政府の組織ではなくNPO」だ。そのテイチ氏が「イノベーションを何のためにやるのか」という本質的な問題提起を発すると、司会の原山優子・総合科学技術会議議員(東北大学大学院教授)も、挑発的な質問をテイチ部長にぶつけるなど。
テイチ氏が盛んに強調していたのは、米国において、最もイノベイティブとランクづけられた企業と、特許の保有数からみた企業のランキングとはだいぶ異なるということだった。
米国で2番目にイノベイティブとされた「グーグルは40の特許すら持っていない」し、「特許の保有数1位のIBMは、イノベイティブな会社のランクでは10位」にすぎないという。
もっとも、これでよいということでもないらしい。特許制度を国際的な制度に調和させる必要がある、という動きが出ていることを紹介していた。「米国内の市場が大きかったため、世界市場のことをあまり考えなかったので、他の国との整合性を取ろうとしなかった」という説明とともに。
また、2001年の9.11テロ以後、急激に米国への留学生が減っていることを紹介し、懸念を表明していた率直さも印象的だった。米国で学び、働きたいという外国人にとって、米国がこれまで通り、引き続き魅力的な国であり続けられるかどうか、と。