レビュー

編集だよりー 2007年3月7日編集だより

2007.03.07

小岩井忠道

 米映画「サンシャイン2057」の試写を見てきた。

 2057年に太陽の活動が急速に低下、このままでは道連れになってしまう地球を救うため特命を帯びた8人の乗員を乗せた宇宙船が、太陽に向かって…という話だ。

 昔、大学受験勉強中に「傾向と対策」(旺文社)の世話になった。その中に載っていた物理(化学だったかも)の問題を思い出す。太陽に存在する水素の量と、核融合反応で水素がヘリウムに変わる式を示し、「太陽の寿命が尽きるまであと何年か」を問う。

 京都大学の入試に出たことがある問題だった。ある数字を水素の量で割れば答えが出る、といった生やさしい問いではない。「さすが京大。よく練った問題を出すものだ」と感心した覚えがある。

 8人の乗員役の俳優をだれにするか、監督たちは、よほど考えたに違いないと思う。8人中3人がアジア系である。船長役を堂々と演じているのが、真田広之だ。もうひとりは、ベネディクト・ウォンという中国系の男優。こちらも有名らしい。酸素をつくりだすための植物園の世話をしている女性科学者役が、何とも知的で存在感がある。マレーシア出身で「アジアのスーパースター」ともいわれるミッシェル・ヨーという女優だと、初めて知った。

 欧州合同原子核研究所(CERN)のブライアン・コックス博士という分子物理学者が、製作に協力しているのも特徴だろう。科学的に明らかにおかしいという場面は、ほとんどないか、極力減らしているということのようだ。

 さて、面白いと思う人が多いかどうか、であるが、SF、ホラー作品もあまり見ていない編集者には、適切な批評は無理だ。

 ストーリーの展開だけに関して言えば、「猿の惑星」や「エイリアン」から受けた印象に比べると、登場人物の描き方では、こちらの方が相当上のように感じる。一方、意外性となると果たしてどうか、といった感想がせいぜいである。

 ちなみに宣伝会社からもらった資料によると、コックス博士は「太陽が消滅するまでには、あと50億年分のエネルギーが残っていることになる」と指摘する一方、映画のように太陽の消滅が21世紀中にあり得るかどうかについては、不気味なことも言っている。

 「ビッグバンが起きた初期の時代に、謎の物体のホスト(宿主)が生成され、現在もなお、宇宙には未発見の物体が飛んでいるとも考えられる。そして、こうした未発見の物体が星の中心に流れ込んで、大破壊を起こすことも可能なのである」

 「50年後に太陽消滅の危機」という設定が、どれだけ多くの人々の心胆を寒からしめるかにかかっている、ということだろうか。この映画がヒットするか否かの鍵の一つは。

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