日本記者クラブで行われた山谷えり子首相補佐官(教育再生会議事務局長)の記者会見をのぞいた。
教育は関係者が多い。風当たりを気にしてか、慎重な発言に終始した印象だった。 具体的な話に及んだのは、「放課後子どもプラン」の説明くらいだったろうか。
用意された資料には、「放課後や土曜日の子供の安全で健やかな居場所、遊び場を確保し、勉強やスポーツ、文化活動、地域住民との交流活動等に取り組む事業をいう。参加は自由であり、子供たちが自由にただひたすらのびのびと遊べるような環境を整備することも重要である」と記されている。
教育再生会議の場では、このプランに関連して、野依良治・座長が「塾はできない子が行くためには必要だが、普通以上の子どもは禁止にすべきだ」、「塾の商業政策に乗っているのではないか」など再三にわたって「塾禁止論」をぶったことが、新聞や雑誌で取り上げられている(2006年12月25日レビュー参照)。
塾禁止論は立ち消えになったようだが、「放課後子どもプラン」は、1月24日の第一次報告に盛り込まれた。
山谷えり子首相補佐官によると「さまざまな方たちがボランティアで参加し、とにかく地域全体がビッグファミリーになるよう」な「遊び学べる場所をつくっていきたい」ということで、全国23,000の小学校すべてに500万円の予算を付けるという。既に「1万校が手を挙げている」そうだ。
うまくいけば子どもの成長には、相当よい影響を与えると思われる。当サイトのインタビュー欄で連載した「子どもに安全で楽しい遊び場を!」の中でも、仙田満・日本学術会議「子どもを元気にする環境づくり戦略・政策検討委員会」委員長は、現代の子どもたちが都会、地方を問わず遊びの場を失っていることがもたらす影響の深刻さに、警鐘を鳴らしていた。
もう1人、この問題に早くから着目し、行動に移している研究者がいる。同じインタビュー欄で最初に登場していただいた川島隆太・東北大学加齢医学研究所教授だ。
川島教授によると、脳の研究成果を基に教授が開発した脳の活性化プログラムを、1昨年度から群馬県前橋市が実行しているという。
最初から子どもたちに適用するのはいろいろ難しい問題があるということもあり、対象者は高齢者である。しかし、その場は小学校だ。放課後の学校に設けられた「寺子屋」には、高齢者たちだけでなく、授業を終えた生徒たちも集まり、宿題などをやる。同様の試みは福島県須賀川市でも行われているのだそうだ。高齢者と子どもたちは一緒に下校するので、下校時の子どもたちの安全確保の効果もあるという。
ただし、こうした試みはまだ一部でしかない。川島教授のお膝元の仙台市では、結局実行できなかったそうだ。市の教育局、福祉局の調整がうまくつかなかったことも、一因らしい。