レビュー

編集だよりー 2007年1月31日編集だより

2007.01.31

小岩井忠道

 日経新聞に連載中だった江崎玲於奈氏の「私の履歴書」が、今朝の朝刊で最終回となった。

 「『未来を訪ねて指針を得よ』と言いたい。過去は記録が残され容易に訪ねられる。…未来を訪ねる唯一有効な手段がサイエンスの探求である」

 最終回も、江崎氏らしい言葉が並んでいた。歴史学者や考古学者はどう読んだだろうか、などとふと考えた。もっともサイエンスという言葉は、人文・社会科学を除外はしていないだろうが。

 IBM研究員当時の江崎氏にニューヨークで長時間、話を伺ったことは前に紹介済みだが、急に思い出した言葉がある。「IBMのよいところは、政府との契約が少ないこと」。その理由は「軍需産業は、本当に役立つ製品を作ろうという考えが希薄になる」からということだった。

 確かに、米国はあちこちで軍事行使をしているが、近代兵器のすべてがその性能をきちんと確かめられているということはないのだろう。核兵器などその最たるものだ。

 スペースシャトルに搭載されているコンピュータはIBM製で、それも最新鋭ではなく、使用歴が十分あり、性能が確かめられている機種だ、と昔、聞いたことがある。トラブルを起こさないという観点から考えると、最新鋭だと、かえって不安があるということだった、と思う。

 シャトルに使われているのに、軍用装置には使われていないとは考えにくい。国防総省からの受注は、他の大メーカーに比べて、大きくないということなのだろうが、IBMがそうした企業経営方針をとっている、という江崎氏の話に感心したことを思い出す。

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