「サステナ」というサステイナビリティ学連携研究機構の季刊誌(編集長・住明正・東京大学教授)最新号に、林隆久・京都大学生存圏研究所助教授の痛快なエッセイ「民族の問題」が載っている。
乗り合わせた電車の中で、チョゴリを着た女子学生相手に北朝鮮による拉致や核実験を非難していた中年男性がいた。「『エエ加減にせんか』と言ってやった。押してきたので肩を横から突いてやったら、そのまま横にドスンとこけた。男性は隣の車両に移っていった」という書き出しである。
責任のない弱い立場の人間に、いい大人が因縁を付ける。似たような場面に遭遇したことがある人は、多いのではないだろうか。そして、林氏のように振る舞いたいものだ、と思う人も。しかし、実際には、なかなかできない。
民族差別ということがいかに不当か、の説明に、林氏は最近の科学的知見を引用している。
「最近のDNA解析によると、日本人の25.5%は朝鮮人、25%は中国人、そして元来の縄文人は20%に満たないことが分かっている。日本人姓であっても、5人のうち4人は日本人(縄文人)ではない」
日本列島の先住民といわれる縄文人の系統を色濃く受け継いでいる人など、日本人の20%にすぎないということだろう。
大学を卒業するまで北関東、東北で過ごし、就職して初めて西日本(広島)に住んだ友人がいる。「周りの人間がみな朝鮮人に見えた」と語っていたのを思い出す。
日本人、朝鮮(韓国)人、中国人などと区別したところで、DNAから見れば、ほとんど意味のない線引きでしかない、ということだろう。