レビュー

編集だよりー 2007年1月21日編集だより

2007.01.21

小岩井忠道

 お相撲さんは、かつて年間20日しか本場所で相撲をとらなかった時代もあったそうだが、いまや年6場所90日、本場所を勤める。とはいえ、東京場所は年3回、45日しかないと言われると、意外に少ないと感じる人もいるのではないだろうか。

 初場所、夏場所、秋場所と年3回の千秋楽の夜は、錦戸部屋の祝勝会に出るのが、この数年の習慣になっている。錦戸親方(元関脇・水戸泉)とも親しい顔の広い高校の先輩のおかげだ。

 錦戸親方が水戸泉として活躍中のことだから、だいぶ前になる。この先輩が音頭を取り、本場所中の親方を都内の割烹料理店に招き、先輩後輩20数人と囲んで飲んだことがある(場所中の親方は、アルコールには手をつけなかった)。そのとき愉快な話を聞いた。

 錦戸親方は同じ高砂部屋の小錦と親しく、現役時代よく一緒に飲みに行ったそうだ。2人がタクシーに乗るとあまりの重さで車体が沈む。2人そろって道路脇に立っていると、タクシーはまず止まってくれない。だからタクシーを止めるときは、体の小さな弟弟子1人だけを通りに立たせ、2人は物陰に隠れていたそうだ。

 ある時、そうとは知らずタクシーが止まり、すかさず2人が乗り込んで来たのを見て、運転手がブスーッ。走行中、一言も口を利かなかったという。

 さて、錦戸部屋は、弟子11人を抱えるが、今場所の成績を聞くと、勝ち越しは4人だけ。最も番付が上位なのは、カザフスタン出身の幕下、風斧山(かざふざん)だが、3勝4敗。部屋初の関取誕生は、今回もお預けとなった。

 土俵上の姿しか知らない方は意外かもしれないが、親方は周りによく気を使う人である。壇上に並んだ弟子たちも、どことなく親方に似て、人がよさそうな人間ばかりに見える。期待の風斧山も似てしまったのだろうか。朝青龍や安馬などのモンゴル出身力士に比べると、見るからに人がよさそうだ。

 二極化というのは、日本の若者の性格にも当てはまるのではないか。いろいろな事情でとてつもなく攻撃的な性格になってしまった一部の人間と、心優しい多くの人間との。

 そんな思いにとらわれた晩だった。

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