レビュー

編集だよりー 2007年1月13日編集だより

2007.01.13

小岩井忠道

 鼻の中が冷気でツーンと痛い、という思いを久しぶりに味わった。毎月第2土曜日と決めて、中山道を歩く。数年もかければ、日本橋から京都まで歩き通せるだろう。1年ほど前まで勤めていた会社OB(一部現役も)のグループに入れてもらって、昨年春からはじめた遊びである。

 30人ほどが往復の公共輸送機関を利用しても、大気中に余分に排出する二酸化炭素(CO2)などたいしたことないだろうから、環境にも優しいはずだ。昼飯は、公園やお寺の境内で、持参の弁当を広げる。歩いている途中、街道沿いの店で買ったからみ餅がうまかったので、次回からは、弁当も現地調達することにしよう。

 今回は、本庄(埼玉県)から倉賀野(群馬県)までの15,6キロほどだ。歩き始めてしばらくすると右手に一部雪をかぶった山並みが見える。「関東平野というのは、やはり広いんだなあ。子どものころから見慣れている日本地図通りに」。山並みの右端、はるかに眺める山が日光の男体山と聞いて、実感する。

 かつて、織田信長が本能寺の変に倒れた直後、信長の家臣で関東管領だった滝川一益と小田原の北条氏が、壮絶な戦いを繰り広げた「神流(かんな)川古戦場跡」という立派な碑があった。この神流川の右岸堤防上を歩くと、見晴らしはすこぶるよい。が、空っ風に「まともに吹き付けてくれ」というようなものである。鼻水が出そうになり、鼻の中も痛くなってきたというわけだ。

 この日の出発点で、集合場所であるJR高崎線の本庄駅に着いたとき、地元の人たちが横断幕を持って並んでいた。「七福神巡り」という催しを目当てに来た人たちを歓迎するためだ、という。

 そのうちの1人が、話しかけて来た。寒いのにコートもつけず、スーツにたすきがけ姿の本庄市長だった。「埼玉県では一番若い市長」とのこと。市政の一番の課題は何かと尋ねたところ「教育の再生です」という。商店街や地場産業の振興といった答えを予想していただけに、これは意外だった。

 帰宅後、ホームページをのぞくと「市長の月いちメッセージ」というページがあり、昨年12月の欄に、教育にしぼったアピールが載っている。

 「私自身、今率直に感じるのは、小中学校の児童生徒、そしてその保護者は、自分あるいは自分の子どもが、学校でいじめや暴力に会わないだろうかという不安感を強く抱いており、また、先生方も学校あるいは自分のクラスの中に、そういう事件が起きるのではという不安感を抱いているということです」

 「国の方針が変わることを待っているだけでは何も始まらない、今こそ地域に住む私たちが出来るところから、改革の努力をする必要があると考えます…」

 教育に対する危機感が、40歳になるかならないかという若い市長にまで行き渡っている現実に、しばし考えさせられた。

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