レビュー

編集だよりー 2007年1月3日編集だより

2007.01.03

小岩井忠道

 毎年のことだが、正月の新聞各紙は読みごたえがある。多分、各社選りすぐりの記者たちが、知恵を絞り、体を動かして書いたと思われる企画記事が、並んでいるからだろう。

 ことしは子供に目を向けた記事が、目を引いた。

 「世界中で日本ほど、子供が親切に取り扱われ、そして子供のために深い注意が払われる国はない」。産経新聞の1面「年頭の主張」に、「逝きし世の面影」(渡辺京二著)から引用した言葉が載っている。もともとの発言の主は、大森貝塚の発見者としても有名な米国人生物学者、モースだ。

 産経新聞の記事にはモースのほかにも、「逝きし世の面影」から引用した外国人の似たような言葉が紹介されている。外国人の目から見た江戸から明治にかけての日本は、子供の楽園だった、というわけだ(インタビュー「子どもに安全で楽しい遊び場を!」参照)。

 さて、その日本の現状はどうか。子供にとって楽園どころか、日常生活における安全すら心配しなければならない国になっているのではないか。毎日新聞が、元旦から始めた連載企画「子どもの空間」は、現在の日本社会で苦闘する子供たちの姿が紹介されている。

 同じ毎日新聞の「ネット君臨」の2回目(3日朝刊)には、ネット社会の中で翻弄(ほんろう)され、痛ましいダメージを受けている子供たちの受難と、子供たちを自分たちの嗜好(しこう)の対象として見ることに躊躇(ちゅうちょ)しないネット時代の不気味な大人たちの存在も。

 いじめを、人気アニメ「ドラえもん」から読み解く東京新聞の連載企画「いじめと生きる」も、読ませる。

 日本の子供たちが、今後成長して、日本社会を支える大人にどのように育つのか。科学技術立国をはじめとする、社会の期待にこたえるような人間になってくれるのか。大人あるいは社会が、そのためにどのようなことをする必要があるのか。各紙のこれからの記事に期待したい。

 ちょっと前までは子供だった25-35歳の青年層に焦点を合わせた朝日新聞の連載「ロストジェネレーション」は、社会の変化に翻弄され苦闘する中から、新しい生き方を探し出す新たな日本人像を提示してくれそうで、これまた楽しみだ。(各新聞の引用は東京版から)

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