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止まらない肥満児童・青少年の増加傾向

2006.12.22

 22日の新聞各紙は、文部科学省が発表した「学校保健統計調査」(速報値)について報じている。ぜんそくの子供の割合が、幼稚園、小中学校で過去最高という点に焦点を合わせた記事が大半だった(読売新聞は、視力1.0未満の小学生の割合が過去最高になったことを強調)。

 こうした中で、産経新聞が1面トップ記事に加え、社会面トップでも「肥満」に的を絞った記事を載せているのが目立った。

 同紙によると、「年齢別の肥満児の出現率を見ると、男子は、5歳で2.57%、7歳で6.22%と増え始め、9歳で10.83%と1割を突破。ピークは15歳の13.52%で、9〜17歳で10%超の状態が続く」。

 女子は、男子ほどではないが「『男女とも昭和52年度以降、一貫して上昇傾向が続いている』(文科省)」という。

 同紙の記事がさらに目を引くのは、肥満の傾向が「東高西低」という顕著な地域差を示していることを、地図付きで示していることだ。

 肥満の率が最も高い15歳で見ると、都道府県別で「最も高いのは秋田の21.43%」。15%を上回った8道県(北海道、青森、岩手、秋田、山形、福島、栃木、徳島)の中で、北関東から北にない都府県は、徳島だけ。

 「日本では食事の内容や生活環境の均一化が進んでおり、東高西低の原因を断定するのは難しい」という日本食育協会の鈴木雅子理事のコメントを紹介する一方、記事は「秋田では都市部より郡部で子供の肥満が多い。遺伝的な要因もあるが、学校が遠くて親が車で送迎することが多いことも運動不足の一因ではないか」という秋田の小児科医師の気になるコメントも載せている。

 記事を読んで思い出されるのは、9月4日に行われた、日本学術会議子どもを元気にする環境づくり戦略・政策検討委員会主催のシンポジウムだ。講演者の1人である小林寛道・東京大学大学院客員教授は、子供の体力低下の現状に加えて、将来いまの子供たちが中高齢者になったときに起こりうる「中高齢者の低体力問題」という深刻な社会問題についても、警鐘を鳴らしていた。

 1964年から続いている文部科学省の「体力運動能力調査」によると、日本の子供たちの体力は、経済成長にともなって体格とともに向上し続けた。ところが85年を頂点に、体格の向上は続いても、体力運動能力は「右肩下がりに低下傾向を示し、(世界的水準に比べ、極めて低水準にあった)60年代の水準に戻ってしまっている」という
(小林教授の報告内容はhttp://www.scj.go.jp/ja/info/iinkai/kodomo/siryo4.pdf)。

 産経新聞が伝える肥満化の傾向と符合する。体格の向上は、実はある時点から肥満化の進行と軌を一にしており、それに呼応するように体力運動能力は低下する一方になっている、ということだろう。

 子どもを元気にする環境づくり戦略・政策検討委員会の委員長を務める仙田満・東京工業大学名誉教授の次のような警告の重大性も、裏付ける結果といえそうだ。

 「この10年間で、子どもたちの体力・運動能力は約10%減少しているという文部科学省のデータに加え、学習意欲もこの25年で25ポイントも減少している、という研究報告も出ている。あそび環境が悪化したことによって、子どもが外で遊ばなくなったことが、最も大きな原因ではないか」

 「その遊びの場がどうなっているかといえば、この40〜50年で子どもたちの遊び空間というのは10分の1から20分の1まで減少してしまっている。さらに問題なのは、田園地域の子どもたちも、都市化の影響を受けて、都市の子どもたち以上に厳しい影響を受けているということだ。少子化のため、遊び集団が成立しなくなってしまい、95年ごろにはすでに他の都市の子どもたちと同じような状態になっている」

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