レビュー

編集だよりー 2006年11月29日編集だより

2006.11.29

小岩井忠道

 日本記者クラブで行われたドナルド・デ・ガニエ氏の記者会見(28日)を聞いた。

 1989年モントリオールで開かれた国際エイズ会議で、HIV(エイズウイルス)陽性者であることを明らかにして、大きな反響を呼んだ人だ。HIV陽性者の国際ネットワーク「GNP+(プラス)」の創始者でもある。

 世界エイズデー(12月1日)に合わせ、11月30日-12月2日に東京で開かれる「日本エイズ学会学術集会・総会」の記念講演のために来日した。

 国際エイズ会議は、第3回(87年、ワシントン)、第4回(88年、ストックホルム)と続けて取材した経験がある。ガニエ氏によると、ストックホルムの第4回会議で「患者は一体どこにいるのか」という質問が出たのがきっかけとなって、翌年のモントリオールから、研究者だけでなく、患者・HIV陽性者も参加する会議になったという。

 記者会見は、通訳の早口にメモが追いつかず(記者という職業も年をとると基本動作が危うくなるということだろう)、ガニエ氏が最も訴えたかったことは何か、実はよく理解できなかった。ただ、日本はHIV陽性者が、事実を隠している場合が多く、HIV陽性者が日常生活を送るのが特に厳しい、ということを強調していることだけはよく分かった。

 会場で配られた資料によると、国内には1万人を超えるHIV陽性者がおり、東京都では、20代、30代の千人に1人がHIV陽性だ、というのに驚く。

 記者会見から戻って広げた夕刊には、2030年にエイズが、死因の3位に浮上するという世界保健機関(WHO)の予測を伝える記事が載っていた。

 ガニエ氏が言うように「近所や親類、家族といった身の周りにHIV陽性者にいるという事態を想像」して、日本も予防、対策を考えなければならない時代、ということのようだ。

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