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編集だよりー 2006年11月28日編集だより

2006.11.28

小泉成史

 東京ガス・横浜研究所を見学した。東京・田町の線路際にあって、山手線から良く見えた同社の研究所が再開発されることになり、最近、横浜市・鶴見の臨海部に移転したのだという。

 見せてもらったのは「マイクロ・グリッド実証設備」。マイクロ・グリッドとは米国で生まれた考え方で、ある小規模の地域内で太陽光、風力発電などの自然エネルギーや燃料電池、蓄電池など複数の電源と制御装置を組み合わせてネットワーク化し、エネルギーを安定的に供給するシステムのことだそうだ。これだけで自立するのではなく、大規模電力系統とも繋がっている。

 1996年、米国西部で大停電があり、シリコンバレーを中心に電力系統の信頼性がIT産業で大きな問題となった。つかっている最中にコンピュータの電源が突然、落ちたら命取りだからだ。米国の電力は日本と違い、中、小の供給会社が複雑に結ばれ、信頼生が低く、しょっちゅう停電する。こうした欠点を克服しようという試みだ。

 日本の電力は信頼性が高いが、太陽光や風力発電などのエコなエネルギーが推進されてくると、自然に左右されるため出力の変動が大きくなり、ネットワーク全体に与える影響も心配されるので、マイクロ・グリッド的な対処方法が必要なのだという。

 東京ガスはさらに天然ガスや水素のネットワークも取り入れた「ホロニックエネルギーシステム」を提唱している。将来は隣近所で余ったもらい物をお裾分けするようにエネルギーを融通しあうコミュニティー、「エコタウン」作り(写真は概念模型)を目指すという。

 ガス会社の研究所で電力供給の研究をしているとは思わなかった。世の中、どんどん変わっている。

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