レビュー

編集だよりー 2006年11月23日編集だより

2006.11.23

小泉成史

 映画「九転十起の男 淺野総一郎の青春」を観た。神奈川県民なので「淺野」という名前は新子安にある中高一貫進学校として知ってはいたが、そこの創立者、「淺野総一郎」がこんな破天荒で先見性のある人物とは知らなかった。映画自体は低予算でほとんどの俳優は学芸会レベル、最後まで観るのはつらかったけど勉強にはなった。

 淺野総一郎は1848年、越中氷見郡の生まれ、地元で商売に失敗し、裸一貫で上京し砂糖水売りから始め、農家が捨てていた竹皮に目をつけて販売して成功。横浜で薪や炭を売り始めるものの自宅が火事で全焼し再び借金生活へ、今度は市のガス局が捨てていたコークスを燃料として販売して富を得る。

 赤字になっていた官営セメント工場を払い下げてもらい軌道にのせ、渋沢栄一や安田善次郎と組んで海運、造船、埋め立てなど様々な事業を展開し、1930年に82歳で亡くなった。「京浜工業地帯の産みの親」とも言われる。

 ちなみに「九転十起」(きゅうてんじゅっき)は総一郎自身が作ったモットーで淺野中・高校の校訓だそうだ。九回、転んでも十回目にまた起きるというのだから、「再チャレンジ」どころの話ではない。明治の人は偉かった。

 観た映画館は川崎に新しくオープンした商業施設「ラゾーナ」内のシネコン。たくさんあるスクリーンの一つでこうした地元ゆかりの地味な映画を上映してくれるのは嬉しい。

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