レビュー

編集だよりー 2006年11月17日編集だより

2006.11.17

小泉成史

 印刷博物館・P&Pギャラリーで開かれている「日本とドイツの美しい本」展を観た。日独、別々の美しい本を選ぶコンクールの入選作を展示したもの。ドイツ側は昨年度の応募図書912点の中から選ばれた60点が並べられている。

 気に入ったのはノンフィクション部門の小さな赤い本「An die Alliens in Japan」(日本に住む外国人のために)。寿司や天ぷら、お辞儀の仕方など定番の解説書だが、シルエットのような品の良い簡略化されたイラストと数行づつ短くまとめられた文章の対比が美しい。色も全部で赤、白、黒の3色しかなくすっきりしている。

 もう一つ、伝統あるズールカンプ文庫の基本伝記シリーズ、「ヘッセ」、「アンデルセン」なども写真や資料の扱い方が素晴らしい。ドイツ語は昔、習ったことは習ったが忘れてしまって今はほとんど読めない。それでも買って手元において、いつも可愛がりたくなる衝動にかられてしまう。

 他の本もそれぞれ、存在感のある主張のある本ばかりだ。

 ネット文化に押される活字文化を再興しようという運動が盛んだ。でも、本自体の美しさ、造形美は忘れ去れているような気がする。手に取った時の質感、充実感はネット文化に対抗できる重要な要素のはずだが。

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