「千島列島で大地震よ!」。赤坂で友人たちと飲んでいたら、ママが興奮した口調で、教えてくれた。
昔なら別の行動をとっただろうが、皆、元記者だから、そのまま飲み続けた。
千島列島というのは、地球科学的に見ると、日本列島と一続きだ。今回の地震のおき方も、いずれまた来る三陸沖地震や東海地震、南海地震などと全く同じである。
千島列島がはじまるカムチャッカ半島の東から、北太平洋の海底にほぼ南北方向に一列につながる海山群がある。発見者は、米国人なのに一つ一つの海山には、なぜか日本の古い天皇の名前がつけられ、全体も「天皇海山群」(天皇海山列とも)と名付けられている。
飛び石のように連なっている海山を北から南にたどってくると、一転、向きが東方向にかわり、ついにハワイの島々に到達するのである。
「ホットスポット」とよばれるマグマを噴出する特別の地点(現在のハワイ付近)が作り出した、興味深い自然の造形だが、問題は、なぜ、途中で海山の並ぶ方向がほぼ直角に変わっているかだ。
フリー百科事典『ウィキペディア』をのぞいてみたら、次のような説明文が載っている。
「ホットスポット上に生まれた海底火山により、現在のハワイの位置に生まれた島々は、太平洋プレートの移動に伴い、海底に沈みこみ海山群となる。かつてはプレートが北に向かって移動していたため、南北に海山群を形成していったが、やがて4000万年ほど前から、移動する向きが西に変わったので、東西に海山群が生まれていくことになった」
要するに、太平洋プレートの進む方向は、4000万年ほど前までは、日本列島の方向ではなく、北を向いていた、というのが、この説明のミソである。
フムフム、その通り! にんまりしてしまった。
30年ほど前、米国の深海掘削船に乗ってこの付近を調べた日本人研究者から、学会で発表する前にこれと全く同じ話を聞いて、記事にしたことがある。「海底プレートが動いているなんて認められない」と公言する研究者が、まだいたころだ。
『ウィキペディア』に載っているということは、この天皇海山群生成説も、めでたく定説になっている、ということだろう。