レビュー

編集だよりー 2006年11月11日編集だより

2006.11.11

小泉成史

 カリフォルニア工科大教授の下條信輔氏とアーティストのタナカノリユキ氏が監修する刺激的な催し、「ルネッサンス ジェネレーション」(金沢工業大学・主催)を見に青山に行った。

 今年のテーマは「悪/善 人はなぜ人を殺すのか」と極めて今日的だ。昨年のテーマは「カタストロフィ」、一昨年は「前頭葉」と、いつも最先端の科学や芸術そして社会性のある話題を取り上げている。

 ゲストは司法精神医学者、霊長類学者、哲学者に、朗読者として俳優の金剛地武志氏(エア・ギターの名手、MXテレビの伝説的番組「東京テレバイダー」司会者)がからむ。

 用事があり残念ながら、最後まで聞けなかったが、タンザニア・マハレ国立公園で確認されたという「チンパンジーの子殺し」の話を聞いただけでも十分満足。

 「ルネサンス」もう十回になる。毎回、仲間の科学記者や編集者がたくさん来ていて、ある種の社交場、情報交換の場ともなっている。主催者の話によると、聴講希望は内容の難解さにもかかわらず毎年増え、最近は特に若い女性が目立つという。

 人気の秘密は、どんな話がでてくるか、何が起きるか分からないというワクワク、ドキドキ感だろう。そして、優秀で話の面白い若い学者を探してくる下條氏独特の鋭い「編集」感覚。偉い先生の予定調和的な話をありがたがって聞く時代はとっくに終わっているのだ。

 「ルネッサンス」は凡百の講演会、シンポジウム、イベントを蹴散らす知的パワーに満ちている。

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