レビュー

竜巻予報の全国展開は現実的か?

2006.11.08

 9人の死者と23人のけが人を出した北海道佐呂間町の竜巻は、おそらく専門家も驚くような出来事だったのではないだろうか。

 朝の人気ラジオ番組、TBS「森本毅郎のスタンバイ」で8日、森本キャスターが、お天気キャスターの森田正光氏に「何で予報ができないのか」と、しつこく詰め寄っていた。

 さては、新聞各紙のなかで、予報に必要性に触れている記事があるな、と思い早速、点検してみた。

 「多発地点では自治体が過去の例を調査し、天気図などから事前に予測することが必要だ。ドップラーレーダーを配備して数十分後の強風を予測できるようにし、情報を共有できる仕組みも作ってほしい」

 「北海道を含む北日本では、秋や冬に突風が多い。空気の流れを感知するドップラー・レーダーを重点的に配備し、数十分後の強風を予測する技術を開発するなど、国も対策に本腰を入れるべきだ」

 いずれも、田村幸雄・東京工芸大教授(日本風工学会会長)の談話である(前者は朝日新聞、後者は読売新聞。いずれも8日朝刊)。

 小林文明・防衛大学校助教授(気象学)も「竜巻は日本のどこで起きても不思議はない。もっとレーダーの数を増やして米国のような竜巻予報を出すべきだ」(毎日新聞8日朝刊)と言っている。

 これらの談話の中に出てくる「(ドップラー)レーダー」とは、日本には「空港にわずか8台が設置されているだけ」(毎日新聞8日朝刊)という装置だそうだ。

 朝日新聞は、8日朝刊社説でも、再度、指摘している。「気象庁は、現在、空港の周囲にドップラーレーダーを配置しているが、それだけでは十分ではない。もっと広く監視できる態勢を整える必要がある。専門家はそう指摘している」。要するに空港以外にも、設置することを考えろ、ということだろう。

 一方、費用対効果抜きの防災論議は、現実的ではないという“常識”がある。例えば地震予知が実現した場合の効果は「竜巻予報」の比ではないと思われる。しかし、この地震予知ですら、東海地震を主たる対象にこれまで予知のために投入されてきた公的資金が、はたして妥当だったかという論議が、根強くある。

 「(竜巻は)発生に必要な条件が重なっても必ず起きるわけではない。…。予測が難しい現状では、何より“備え”が重要だ」(山本晴彦・山口大学教授、産経新聞8日朝刊)といった専門家の声にも、耳を傾ける必要があるのではないか。(各新聞の引用は東京版から)

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