学会、シンポジウムの取材というのは、苦手だった。味も素っ気もないスライドを映されて、分かりにくい専門用語の羅列を聞いていると、ついウトウト、ということも少なくなかった。スライドを映しているときの会場の暗さ加減が、眠気を誘うのにぴったり、ということもあって…。
というのは昔の話だ。理化学研究所などが主催の「X線自由電子レーザーシンポジウム」を傍聴して、あらためて時代の流れを感じた。
X線自由電子レーザーというのは、「国家基幹技術」に指定されている重要プロジェクトである。先行する米国、欧州より遅れてスタートする代わり、米欧を上回る装置を作ろうという野心的な計画だ。だから、もしシンポジウムの報告者たちが、関係者だけに分かればよいという気持ちで登壇したら、大半の人間にはチンプンカンプンとなるのは必至である。
ところが、今日のシンポジウムを含め、最近の研究者たちの話し方は、昔とはえらい違いだ。パソコンを苦もなく使って映し出す図や表が、まず、よくできている。
「新しい光があれば、新しいサイエンスが生まれる」。X線自由電子レーザー開発の意義を、このような言葉で表現した石川哲也・X線自由電子レーザー計画合同推進本部プロジェクトリーダーの報告など、昼食を食べた後にもかかわらず、眠気など全く感じさせない内容であった。
19世紀中ごろまで、走っている馬の絵は、大半が少なくとも1本の足を地面につけていた。連続撮影ができる写真技術が登場するまで、馬が走っているときには、足が4本とも地面から離れていることがあることを、ほとんどの人は知らなかったから。
この例えも面白い。
石川プロジェクトリーダーには、会場で早速、わがポータルサイトのために、報告の内容を短くした文章をお願いした。近々、オピニオン欄で紹介できると思う。こうご期待!