10月19日付け朝日新聞夕刊文化面「テークオフ」欄に福島真人・東大助教授の興味深い研究が紹介されている。
福島助教授は、「1年間にわたり首都圏の救命救急センターに入り、治療の様子や医師や看護師らスタッフ同士の話し合い、新人教育」をフィールドワークという文化人類学の手法で観察したというもの。
「もともとはインドネシアの宗教と政治を研究してきた」が「人間の普遍的な思考能力を研究したいと考えた」そうだ。
文化人類学の手法で科学の現場を観察する研究は日本では珍しいが、米国では20年以上前からおこなわれている。有名なのは米カリフォルニア大ロサンゼルス校のシャロン・トラウィークさんで、日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)とスタンフォード大学の加速機研究所(SLAC)に長期滞在し、両者の科学者コミュニティにおける意志決定の違いなどを文化人類学の立場から比較考察した。
素粒子物理学という最先端の科学的論理だけが支配しているような世界でも、研究者の上下関係のような文化的要素とは無縁ではないことを明らかにしている。
科学を社会的文脈から捉え直す試みはいろいろな方向から行われるべきだろう。科学の報道もそれに合わせて多角的でありたい。