レビュー

科学とニセ科学(2)

2006.10.04

 2日付け読売新聞夕刊「SCIENCE WALK」欄のルポ「現場から」(見出しは"ニセ科学"横行防げ)を読んで驚愕し、あきれはてた。9月に開かれた日本物理学会で九州大の助手(記事原文は実名)が発表した内容にである。

 概略を引用すると「水を入れた小瓶4本にそれぞれ"ありがとう"、"ばかやろう"、"Thank you"、" You fool"と印字した紙をテープで張り付け、7日後と14日後に水中の元素濃度を計測した。

 その結果、"ばかやろう"と"You fool"だけが、7日後にカルシウムが増加し14日後にはそれが減少していた。」

 助手氏曰わく「言葉の持つ意識エネルギーが水の中の元素の核変換を引き起こし、別の元素に変えたためと考えられる」

 当然、場内からは質問が相次いだ。

 「"何度実験しても同じ現象が起きることを確認したのか"という科学の基本ともいえる質問に"再現実験はやっていない"」

 「"言葉の持つエネルギーというが、どの程度の大きさなのか"という質問には"そこまでは調べていない"と答えるにとどまった・・・。」

 最後には「それは科学ではない」という批判がでたというのも無理からぬところだ。

 科学ジャーナリズムはともするとスクープを追い求めるため新奇性のある発表だけを追い求めがちだが、こうした「トンデモ発表」を批判するのも重要な役目だろう。その意味でこのレポートはあまり見かけない優れた記事だと思う。

 それにしても、「科学ではない」と断言されるような発表をれっきとした大学の助手が学会ですることにびっくりした。科学の歴史は最初、権威から否定される発見から始まることのくり返しだから、常識とは異なる発表を頭から否定するつもりはないが、この発表内容と質問に対する答えはひどすぎる。

 この助手氏だけの特例だと思いたいが、もしもあちこちの大学や学会でこうしたレベルの発表が横行しているとしたら、「科学技術創造立国」もヘチマもない。下手をすると最近話題になっている研究費の不正使用よりももっと深刻な話かも知れない。

 研究費の問題は言ってしまえば科学者コミュニティだけの問題だが、「ニセ科学」の横行は国民全体の意識の問題だからだ。

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