レビュー

大学全入時代でますます苦しい工学系?

2006.08.18

 今春の工学部入学試験で、理科2科目を必須とした岩手大の受験生が前年の3分の2に激減した。

 15日から始まった日経新聞の連載「大学激動−第7部『数と質』揺れる入試」は、冒頭に、こんな事実が紹介されている。大学全入時代を迎え、大学入試が「振るい落とす」から「迎え入れる」に変わりつつある現状を象徴するような。

 少なからぬ国立大学が、かつては理系、文系とも入学試験に理科、社会2科目ずつを課していた。大昔の話ではないはずだが、いまや工学部ですら理科2科目にすると、こういう目に遭う。

 この連載の3回目(17日朝刊)には、「山梨大の今春の入試で、工学部志願者が前年に比べ4割減った」「私立大の工学部に至っては45%が定員割れ」といった事実も。

 日本の若者の理工系、とりわけ工学系忌避の傾向は、相当深刻ということだろう。

 「万人のための科学という世界物理年を記念したシンポジウムが、4月に都内で開かれた。パネリストの1人、榊裕之・東京大生産技術研究所教授が、次のような反省をしていた。「私立大が、入りやすい(試験科目を減らす)入試にするにはそれなりの事情があっただろうが、国立大も同じようにしたのはよくなかった」

 では、「振るい落とす」時代のように入学試験を難しくすれば、何がしかの効果が期待できるのだろうか。同じシンポジウムで、小舘香椎子・日本女子大理学部教授は、次のような現実を明らかにしている。

 「日本女子大には、数学と物理学を一緒にした数物科学科があるが、この科の学生で高校時代に物理を学んだことがあるのは2割しかいない」

 物理学が嫌いだったからではなく、そもそも彼女たちの出た高校に物理という科目がなかったから、というのである。(日経新聞の引用は東京版から)

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