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卵子、胚を使わない万能細胞への期待

2006.08.11

 卵子や胚など、取り扱いに倫理的な問題がつきまとう生殖細胞を使わず、皮膚の細胞から「万能細胞」をつくることに、山中伸弥・京都大再生医科学研究所教授たちのグループが成功した。

 マウスという動物段階の話だが、病気や事故で失われた臓器を再生する夢の医療(再生医療)実現に向けて、突破口になり得る成果として、各新聞が11日の朝刊で大きくとり上げている。

 この研究は、国の戦略的創造研究推進事業の一つである「先進医療の実現を目指した先端的基盤技術の探索・創出」の1テーマとして、2003年度から研究助成を受けている。研究成果が、予想以上に早く出たことに対する専門家たちの驚きが以下のコメントからもうかがえる。

 「今回の成功は、(初の体細胞クローンの羊)ドリーが生まれて以来の驚きだ」(西川伸一・理化学研究所幹細胞研究グループ・ディレクター=毎日新聞11日朝刊)

 「ES細胞の倫理問題と拒絶反応問題を解決した万能細胞にできる可能性がある」(中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長=朝日新聞11日朝刊)

 「再生医療の研究の流れは今後、今回のような細胞作製の方向に必ず進むだろう」(若山照彦・理化学研究所発生・再生科学総合研究センター・チームリーダー=読売新聞11日朝刊)

 他方、再生医療には、まだまだ多くのハードルが残されていることもまた、各紙は指摘している。

 再生医療の切り札になると期待されている「万脳細胞」については、これまでヒトの受精卵からつくられる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に世界的な関心が集まっている。文部科学省は、厳しい条件を課しながらもこの分野の研究を進めることを狙い、クローン技術規制法に基づく指針の改定をめざした作業を進めている。(毎日/朝日/読売新聞の引用は東京版から)

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