レビュー

サステイナビリティを身近な言葉に

2006.08.11

 「持続可能な地球に」という言葉は、耳になじんでいる人が多いと思われるが、「サステイナビリティ」となると、どうだろうか。

 昨年度、戦略的研究拠点育成プロジェクト(スーパーCOE)として発足したサステイナビリティ学連携研究機構が、季刊誌「サステナ」を創刊した。「サステイナビリティ(学)」の重要性を知ってほしい。当事者の気持ちが、各ページからうかがえる内容だ。

 「学術は社会のニーズに応じて生まれてきたといわれる。サステイナビリティ学も、今必要があるということがひとつの理由。もうひとつは放っておいても生まれないからです。必要な学が十分に動員されなければ生まれてきません」

 5つの連携大学、4つの協力研究機関・大学を束ねる機構長である小宮山宏・東京大学長の言葉である。

 機構の実質的なリーダー役を務める武内和彦・東京大教授(緑地環境学)、住明正・東京大教授(気候システム学)、植田和弘・京都大教授(環境経済学)による座談会「環境学からサステイナビリティ学へ」の発言は、もっと生生しい。

 「連携機構は文部科学省の科学技術振興調整費によって運営されているが、本格的な活動を始める前の昨年末に、サステイナビリティ学をきちんと定義しなさいという課題を突きつけられた。『定義は育成期間終了までに皆でよく議論してまとめます』と答えたら、『定義をきちんとしなかったら予算の継続は認められない』といわれまして(笑)」(武内和彦教授)

 「対策という発想はやめた方がいいと思っている。温暖化対策とか、もういわないほうがいい。温暖化は対策で対応できるものではないんですよ。新しい生き方とか、新しい経営の在り方とかが求められている。新しい仕事をし、新しい地域をつくっていくと戦略的に考えてやるべきです」(植田和弘教授)

 「映画をつくるにはいろいろなプロが必要。それぞれの部門ごとにプロがいる。そのプロがたくさん集まったからといって映画ができるわけではない。サステイナビリティ学に期待されるのは映画監督の役割ではないかな。未来の社会を構想していくわけだから、いろいろな分野のプロを集めて、一つのまとまったものを生み出していく。それがサステイナビリティ学の役割でしょう」(住明正教授)

 ちなみに、参加大学の担当者が集まり、大いに議論した結果、まとまったサステイナビリティ学の定義は以下のようになったという。

 「地球システム、社会システム、人間システムの3つのシステム、およびその相互関係に破綻をもたらしつつあるメカニズムを解明し、持続可能性という観点から各システムを再構築し、相互関係を修復する方策とビジョンの提示を目指すための基礎となる学術であって、最終的には持続可能な社会の実現を目指すものである」

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