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温暖化対策の効果は疑問?

2006.06.30

 地球温暖化の恐れは十分にあり、二酸化炭素を初めとする温室効果ガスの排出削減は、緊急かつ最も重要な課題のひとつ。

 しかし、大気中の二酸化炭素濃度の増加によって深刻な温暖化がもたらされるという考え方を認めない研究者、二酸化炭素排出削減など効果がないと考える研究者も、またいる。

 東京新聞が27日朝刊科学面で、こうした温暖化懐疑派の研究者たちの言い分をとり上げている。

 「確かに大都市の気温は百年で2、3度上がっている。それは熱を大量発生させる都市独特の現象。北極圏も気温が上昇しているが、寒冷化した1970年代の反動とも考えられる。温度計は主に都市に置かれ、海上にはない。南極の気温は上がっていない。全地球的にみたら上昇には疑問がある」(渡辺正・東京大生産技術研究所教授)

 「京都議定書の内容を守っても温暖化は防止できないということ。議定書に参加しない米国や中国が悪いというレベルの話ではない。むしろ変化する気候に適応した食糧生産などを考えた方がいいかもしれない」(丸山康樹・電力中央研究所研究参事)

 記事のトーンは、温暖化対策懐疑派の意見ももっと注目されていいのでは、ととれるが、この問題が通常の科学的論争とは異なることも押さえている。丸山研究参事の次のような言葉も紹介して。

 「温暖化は、地球の慢性病のようなもの。あきらめるのではなく、子孫のために、やはり排出削減に手を打ったほうがいい」

 さて、東京新聞の記事に併せて、温暖化問題についての別の見方を紹介したい。日本では、他の先進諸国に比べて温暖化に対する具体的な発言、動きがあまりに少なすぎる。そちらの方こそ深刻な問題だ、という。

 「サステナビリティの科学的基礎に関する調査プロジェクト」(昨年10月末に報告書まとまる)という大掛かりな聞き取り、文献調査の座長を務めた山本良一・東大生産技術研究所教授は、ほとんどの研究者たちが温暖化の問題で明確な意思表示をしていないことに特に危機感を表している。

 米国にも、温暖化に懐疑的な有力研究者はいる。しかし「温暖化は確実に起きている。その原因はわれわれの経済活動にある」という声明を、著名な経済学者25人がブッシュ大統領あてに出すといった具体的な行動もしばしば見られる。

 この種の動きが日本ではほとんどないことが問題だ、と。

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