レポート

英国大学事情—2015年4月号「2014年度・英国大学統計資料」<英国大学協会:2014年11月発行資料より>

2015.04.02

山田直 氏 / 英国在住フリーランス・コンサルタント

 英国在住約40年のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。(毎月初めに更新)

【1. はじめに 】

  • 2014年11月、英国大学協会(Universities UK)は2014年度版の「Higher education in facts and figures」と題する、英国の大学の統計資料を発表した。これらのデータは、主にHigher Education Statistics Agency(HESA)の2012/13年度統計資料を基にしている。
  • 約1年半前の「英国大学事情2013年第12号」に掲載した2013年版の英国大学協会資料集の更新版として、今月号では、同協会の最新資料を抜粋および一部編集して紹介する。

【2. ハイライト 】

  • 英国の大学は、2011/12年度の英国経済に730億ポンド(13兆1400億円(*1))の貢献をした。これは英国のGDPの2.8%に相当する。
  • 英国の大学は、2011/12年度において、107億ポンド(1兆9260億円)もの輸出収入を英国にもたらした。
  • 英国の大学は、英国の地域社会における主要な雇用機関である。大学による100名の雇用あたり、より広範囲な地域社会に117名の間接的雇用を産み出している。
  • 2020年までに創出される新たな職種の80%以上は、大卒者によって占められると予想される。
  • 学生の学生生活満足度は上昇傾向をたどっており、2014年には過去最高の86%に達した。ちなみに、調査が開始された2005年度は80%であった。
  • 大卒者は、景気後退期にも失業の確率は比較的低い傾向にある。
  • 英国の高等教育への公的支出はGDP比0.88%と、OECD諸国の平均値より低い水準にある。例えば、フィンランド1.87%、ドイツ1.12%、米国では0.94%である。
  • 英国の大学で行われている研究の3分の2弱が、公的資金にて賄われている。
  • 2012/13年度において、英国で学ぶ海外留学生の44%がアジアからの学生である。

【3. 地方別の高等教育機関数 】

【4. 高等教育進学率 】

(筆者注:上記の1999/00年度と2002/03年度の数値は筆者による加筆。2012/13年度における進学率の落ち込みは、授業料の大幅値上げが一時的に影響したものと思われる。現在では、回復の兆しが見えている。)

【5. 学士課程・大学院課程別学生数の推移 】

【6. 学位・資格授与数 】

【7. 職種別の大卒者の比率 】

【増加傾向にある職種と大卒者の比率】

【減少傾向にある職種と大卒者の比率】

*1982年から2005年におけるGDPの増加の20%は、増加した大卒者のスキルによるところが大である。また、増加傾向にある職種は、他の職種に比べて高い比率で大卒者を雇用している。

【8. 高等教育機関の総収入と総支出 】

【総収入の内訳】

*2012/13年度において、HEFCE等のファンディング・カウンシルからの運営費交付金が全収入に占める比率は24%と、前年度の35%から大幅に減少した。

筆者注:大学への運営費交付金の大幅削減の見返りとして、2012/13年度より イングランド地方の大学の授業料の上限は3,000ポンドから9,000ポンドに引き上げられた。なお、EU域外からの留学生への授業料には上限が設定されていないため、学科によってはかなりの高額となる。)

【総支出の内訳】

【9. 英国の大学における助成元別の研究開発支出 】

【10. 大学を含めた英国全体の公的資金による研究開発支出 】

*2007年度から2012年度にかけて、公的資金による研究開発支出はインフレ率調整前で約5億ポンド(900億円)減少している。また、英国における公的研究開発支出のGDP比率は、OECDおよびEU諸国に比べて、約0.5%と低い水準にある。

【11. フルタイム・パートタイム別:学士課程・大学院課程学生数(2012・13年度) 】

*2007年度から2012年度にかけて、公的資金による研究開発支出はインフレ率調整前で約5億ポンド(900億円)減少している。また、英国における公的研究開発支出のGDP比率は、OECDおよびEU諸国に比べて、約0.5%と低い水準にある。

(筆者注:「研究を中心とする大学院課程」は通常、博士課程を指すが、大学や学科によっては、修士課程から研究を中心とするコースもある。また、英国の大学では働きながら学ぶパートタイムの大学生が多いが、近年、その数は減少傾向にある。)

【12. 学科別学生数(2012/13年度:概数、学生数の多い学科順) 単位:1万名 】

【13. 出身地別:学士課程・大学院課程学生数 】

*3 2年コースの「Foundation Degree」等

*学士課程学生の13%、学院課程学生の37%は、海外からの留学生である。

(筆者注:学士課程、大学院課程を合わせた学生数は前年度の2,496,640名から2,340,280名と15万名強、減少した。これは先に注釈したように授業料の大幅値上げが一時的に影響したとみられ、最近では回復傾向が見られる。)

【14. 留学生の出身地別比率 】

*海外からの留学生の約44%がアジアからの留学生であり、中国からの留学生は全留学生の約20%、インドからの留学生は約5%を占める。2012/13年度には、インドからの留学生は前年度比7,500 名の減少、中国からは5,100名の増加となった。

(筆者注:インドからの留学生の減少は、英国政府が学生ビザの取得条件を厳しくしたための影響と思われる。)

【15. アカデミック・スタッフ 】

全アカデミック・スタッフの74%が英国人であり、14%が英国以外のEU諸国、11%がEU域外からのスタッフである。

(参考資料:英国大学協会(Universities UK)

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