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著者の「教育活動総合サポートセンター」(川崎市高津区)とは、2004年8月にOB教師たちが設立したNPO(特定非営利活動法人)だ。主な活動が、不登校やひきこもりなどの児童・生徒への学習支援。その元理科教師スタッフたちが、子どもたちの学校離れ・学習離れ・理科離れをなくし、好ましい人間関係やコミュニケーション能力を育てようと、6年前に「サイエンスキッズクラブ」をつくり、取り組んできた実験活動の中から選んでまとめたのが本書だ。
紹介しているのは、第一章の「身近な自然と遊ぼう」では野草の観察や草木染め、葉脈標本づくりや気温を測る移動式百葉箱づくりなど、第二章「手軽な材料で化学実験&電気で遊ぼう」では、果物や炭でつくる電池、シャボン玉遊び、静電気を利用した「空中をただよう電気クラゲ」、永久磁石と電磁石を使ったリニアモーターカーなど。さらに第三章「物理の実験工作をしよう」では、ゴム風船から吹き出す空気で動く「CDスライダー」、偏光万華鏡やピンホールカメラ、ポンポン蒸気船づくりなどを取り上げている。
それぞれの実験紹介では、テーマに関する「子どもたちの実態」や「ねらい」「活動内容と展開」、実験による「子どもの様子と変化」を説明し、子どもたちの反応や興味の様子なども描いている。さらに、実験で使用する材料や薬品名、分量、入手の仕方、実験方法なども分かりやすく、丁寧に示しているので、一般の学校での授業や科学クラブの活動などにも大いに活用できそうだ。
学校現場では、“教員の理科離れ”も指摘されている。「観察・実験の準備や片付けが大変である」「危険を伴う実験は避けたい」「原理が難しくて分からない」というのが教員たちの本音のようだが、本書を読めば、改めて実験や工作、科学遊びに挑戦してみようという気持ちになるのではないか。
また本書の第四章では自由研究の事例集も紹介している。夏休みなどに、自由研究の進め方に悩んでいる子どもに対して、どのような指導(相談)をすればよいのか、実践に基づき段階的に説明しているので、教員や保護者にとっても役立つことだろう。
なお編者の公益財団法人・東京応化科学技術振興財団は「科学教育の普及・啓発助成」を設け、理科好きの青少年を育成するボランティア活動を支援している。本書はその活動成果を教育現場に生かしてもらおうと、シリーズ化された一つである。シリーズには、『キュリー夫人の玉手箱-科学は素敵がいっぱい』『ふしぎ不思議の理科教室-楽しくできる実験と工作」『若き理科教師たちの実験室」が刊行されている。