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最近ニュースで話題になった「コンプガチャ」問題(注1)。携帯電話ネットワークやインターネット上でゲームをやらない人にとっては、正直、初めて耳にする言葉だったのではないだろうか。インターネット上で起こる問題はまだ法的に整理されていないことも多く、何が問題なのかさえわからないこともある。通信手段の多様化によって子どもが気軽にインターネットにつなげられるようになった昨今、こうしたニュースが流れると、「わが子が危険な目にあっていないだろうか」と不安になるのが親心というものだろう。
「コンプガチャ」の問題で指摘されるのは「射幸心を過剰にあおる」という点だ。しかし、この問題を理解するだけでも、ソーシャルゲームやRMT(Real Money Trading)、SNS(Social Networking Service)、スマートフォン、事業者の課金の仕組みなど、インターネットに関する幅広い情報リテラシーが必要となる。他のネットトラブルも同様で、インターネットの使い方を単に知っているだけでは、その本質は見えづらい。
こうした状況に対処するために政府も、青少年がインターネットを安全に使うための施策を進めている。先ごろ意見募集が開始された計画(注2)には、教育及び啓発活動の推進に加えて、インターネットサービス運営者が施す安全対策も盛り込まれた。さらに、千葉県でも2012年7月から施行する条例(注3)の中で、携帯電話事業者などの保護者に対するリスク説明の義務付けを謳っている。
しかしながら、これらの施策に頼るだけでは、自治体なり事業者なり、他者にリスク回避を委ねることになってしまう。やはり、自分自身で判断し、わが子と向き合えるだけの情報リテラシーを持つことは必要なのではないだろうか。
本書には、子どもにインターネットにアクセスさせるときや、ネットワーク機器を使わせるときに気を付けたいことが、やさしくまとめられている。多様なアクセス手段とその特性、迷惑メール、個人情報、ソーシャルネットワーク、ネット生放送、ゲームなどなど。
編者である一般社団法人インターネットユーザー協会(Movements for Internet Active Users(通称:MIAU))は、「規制よりも先に教育があるべき」というポリシーのもとに、ユーザ目線からさまざまな情報リテラシー啓蒙活動を行ってきた団体だ。このMIAUのメンバーを中心としてネット関連企業の社員、思想家、弁護士などが集まり、幅広い視点から、問題に対する解決策が提示されている。
全編を通して親目線で書かれているのが特徴で、章ごとに挿入されているコラム「大人が気をつけたいマナー」や「(子どもに)リアルな金銭感覚を持たせるには」からは、ちょっとした子育てノウハウも知ることができる。
そろそろ娘に携帯端末を持たせようかと悩んでいる父親も、なにやら最近ゲームにはまっている息子が心配な母親も、保護者のための新しい教科書を手に、子どもがインターネットと上手に付き合う方法を学んでおくのはいかがだろうか。
- (注1)「カード合わせ」に関する景品表示法(景品規制)上の考え方の公表及び景品表示法の運用基準の改正に関するパブリックコメントについて(消費者庁)
- (注2)「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(素案)に対する意見募集要領(内閣府)
- (注3)千葉県青少年健全育成条例の概要(千葉県)


