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スマートフォンの勢いが止まらない。米アップル社が「iPhone3G」を投入したのが2008年、それからわずか数年、2011年のスマートフォン通期出荷台数は前年比2.8倍の2,417万台、さらに2012年度には2,790万台に増え、携帯端末総出荷台数の7割近くになると予測されている(注1)。
なるほど、街中にはスマートフォンユーザーがあふれている。わずかな隙間時間に、端末を取り出して操作する姿もちらほら。雑誌やテレビでも、スマートフォンの話題を見かけない日はないくらいである。
とはいえ、そこで目にする情報は、カメラの機能やディスプレーの大きさ、使えるアプリケーション、料金プランなど、表面上の使い勝手に関するものがほとんどだったり。
そんな中、本書は書名の通り、スマートフォンの中の仕組みを解説した本となっている。GPS(全地球測位システム)、タッチパネル、高速通信、おサイフケータイ、Bluetooth(ブルートゥース)、無線LANにいたるまで、スマートフォンに搭載されているさまざまな技術要素を本書一冊で俯瞰することができるのだ。通常こうした技術書はハードカバーであることが多いのだが、本書は珍しく新書サイズであり、技術書でありながら気軽に手に取って読むことができる本になっている。
とりわけ通信がつながる仕組みに関しては、全体の半分以上を割いて詳しく解説していて、それは一見、一般ユーザーにとっては必要のない情報のようにも思える。しかしながら、例えば、通信がつながらない時、システムの裏側で何が起きているのか、その仕組みを知っておくことにより、別の通信方式へ切り替える判断をすることができるし、各機能の動きを理解することにより、使わない機能をOFFにするなど、ちょっとした工夫で消費電力を抑えることも可能だ。また、通信の特性を知ることは、デザインやキャンペーンに惑わされないで、自分に合った料金プランを決めるのに役に立つかもしれない。まさに、スマートフォンをスマートに使う、一助になるのではないだろうか。
ひとつ気になる点は、技術説明に終始し、負の側面-セキュリティ問題-にはあまり触れられていないことだ。スマートフォンは高機能な携帯電話というより、高度な無線機能がついたモバイルパソコンともいえる。利用者の目的に応じてさまざまなカスタマイズが可能な道具であることから、ユーザー自身がセキュリティ対策に関心を持つことが重要だ。本書で技術的仕組みを知ったうえで、セキュリティ関連の情報にもさらに目を通しておくことが肝要であろう。(注2)
- (注1)株式会社MM総研「2011年度通期国内携帯電話端末出荷概況」より
- (注2)各公的機関のスマートフォン関連のセキュリティ情報
- 総務省「スマートフォン・クラウドセキュリティ研究会 中間報告 〜スマートフォンを安心して利用するために当面実施されるべき方策〜」
- 情報処理推進機構「大丈夫?あなたのスマートフォン-安心・安全のためのセキュリティー」
- 情報処理推進機構「スマートフォンを安全に使おう!〜スマートフォンを安全に使用するための6箇条〜」