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日本には現在、活火山が108あります。「そんなにあるの?」と驚かれる人も多いのではないでしょうか。また子どものころ、火山は「活火山」、「休火山」、「死火山」の3種類に分類されると学んだと記憶されている人もいるでしょう。しかし、休火山とされていた雲仙岳(1990年)や、死火山とされていた御嶽山(1979年)などが噴火し、また国際的にも活火山の定義が検討されはじめました。そこで、2005年に気象庁により、日本の火山は108と発表されたのです。さらに、活動度指数によってABCの3ランクに分類され、かつての「休火山」や「死火山」という名称はほとんど使われなくなったとのことです。
著者の一人である神沼克伊氏は、富士山や箱根山を眺めて育ったといい、もう一人の著者である小山悦郎氏は、浅間山を眺めながら育ったそうです。火山や地震を専門とする研究機関で自然科学の道を進んだ両者は、火山を通して自然の不思議、面白さ、偉大さ、そして恐ろしさを伝えたいという気持ちを本書に込めています。
本書は、第1章の火山についての入門編と、第2章から7章にわたる各地における火山の詳細編に、大きく2つに分けることができます。また、コラムがところどころに盛り込まれています。第1章では、冒頭に登場した火山の分類をはじめとする20世紀の地球科学分野の進歩、火山噴火の仕組みや火山と地震の関係、そして火山噴火の予知や防災マップについてなど、基本的なことが盛り込まれています。いずれも、著者たちが自ら撮ったものを含めた美しい写真や、分かりやすいイラストによって、平易に解説されています。第2章からの日本を6つに区分された各火山に関しては、この第1章を理解することで、より興味深く読み進めることができます。いずれも美しい景勝としての火山や、噴火によって大きく変化した様子などの数多くの写真が掲載されていることも大きな特徴です。
北海道に住む推薦者にとって、興味深かったのは有珠山の噴火の記述でした。2000年の噴火に関しては、噴火前からの連日の報道や当日の噴火の様子が思い起こされます。特に、避難指示区域から全員の避難が完了した後に、本当に大きな噴火が始まったことは、北大の研究者を中心とした学問としての火山研究と、そこに暮らす一般の人々の判断が合致した出来事として、記憶に残っています。
また、本書は2011年2月に初版が発行されています。ですから、3月11日の東日本大震災が起きる以前の本になります。ところが、コラム6は原子力発電所とのかかわり、コラム7は大地震発生とのかかわりがテーマとなっています。もちろん偶然でしょうし、もし発行が震災以降でしたら、別の表現の仕方になっていたかもしれません。それでも、これらは火山を考える時には、必ず念頭に置くべきことには変わりありません。今年1月には新燃岳が噴火してまだ終息していませんし、5月には阿蘇山も噴火で警戒レベルが引き上げられました。また、東日本大震災以降、全国13の活火山が活発化したとの報道もありました。皆さんの住んでいる地域には、どのような活火山があるのかを知ることも、重要なことかもしれません。そして、本書はそのきっかけとなる一冊になることでしょう。