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大都市の地を踏んだ時、誰もが一度は額に手をかざして高層ビル群を見上げたことがあるのではないだろうか。最近では東京スカイツリーが注目の的であるが、まだ完成には遠い今でさえ、その存在感には目を見張るものがある。人はなぜ超高層建築物を造るのだろうか?
本書では導入として、第1章で高層ビルの歴史から未来都市建築の構想が書かれている。特に、未来都市建築の構想は「これが本当に現実として可能だろうか?」とつぶやきたくなるほどの壮大なスケールだ。
高層建築の構造形式、構造材、建築機械など、ちょっと専門的な内容がお好みなら2章から4章がお勧め。地震や火災、暴風に対する安全対策については6章、7章以降は超高層ビルに関する豆知識が素朴な疑問に答える形で分かりやすく紹介されている。個人的に興味深いと感じたのは5章で、超高層ビルを快適にするための仕掛けが解説されている。例えば超高層ビルに必ず必要なエレベーターについては「数と速度」が重要とのこと。
また、用途の違う水をビル全体に循環させる仕組みなどの解説も面白い。ただ上から下に落とせばいいというものではないということだ。私たちが普段何も考えずに利用している超高層ビルにはさまざまな仕掛けがあり、それなくしては快適に過ごせないのだということにあらためて驚かされる。
本書はかなり専門的な内容から豆知識まで、超高層建築物にかかわるあれこれが詰まった一冊となっている。